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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(48)「努」  奴隷が農耕につとめる

2009.2.28 13:12

 農具の鋤(すき)を表す「力」の関連字について説明してきましたが、日常使う漢字の中には、まだまだたくさんの「力」関係の文字があるのです。

 しかも鋤は農作業に使う道具ですから、労働に関するものがほとんど。働くことはいつの時代もたいへんなことですが、昔は機械化はまったくありませんので、人間の力のみが頼(たよ)りです。したがって紹介(しょうかい)する文字も結構、たいへんな内容を持ったものが多いのです。

「努」

 まずは「動」の紹介から。この字の偏(へん)は現在の字形では「重」ですが、元の字形は「童」でした。「童」は以前にも説明しましたが、目の上に入れ墨(ずみ)をした人の意味で、犯罪を犯して刑罰(けいばつ)を受けている者、または奴隷(どれい)的身分の人のことです。

 その「童」(重)に「力」(鋤)を加えた「動」は農耕に従事することです。そこから体を「うごかす」「うごく」の意味となりました。でも元来は偏が「童」でしたから、もともとは奴隷的な召使(めしつか)いが農耕に従事する意味があります。

 現在は「はたらく」意味の字には「動」に「人」を加えた「働」を使っていますが、これは日本で生まれた文字です。でも中国に逆輸入されて、中国でも「はたらく」意味に使われています。

 「努力」という言葉の両文字にも「力」があります。ほんとうに「力」が漢字には多いですね。

 その「努」は「奴」と「力」でできた文字ですが、まず「奴」について説明したいと思います。

 「奴」は「女」に「又(また)」を加えた文字。「又」は手を表す形です。つまり「奴」は「女」を「手」で捕(つか)まえて奴隷にすることです。意味に「めしつかい」「しもべ」「やっこ」などがあります。

 その「奴」に「力」(鋤)を加えて、農奴が農耕に努めることを意味する漢字が「努」なのです。そのことからすべてのことに「つとめる」「はげむ」意味となりました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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