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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(52)「安」 嫁ぎ先の廟にお参りする 

2009.3.28 13:26
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 「女」を含(ふく)む漢字はたくさんありますが、よく知られた字で、考えてみるとなぜ「女」があるのだろうと疑問に思う漢字に「安」があります。

 神の前にひざまずく女性の姿が「女」ですが、この「安」もやはり同じ意味を含んだ漢字です。

 「安」の「宀」は建物の屋根のことですが、この場合、祖先の霊(れい)を祭る廟(みたまや)の屋根を表しています。「安」はその廟の中で女の人が座っている姿。

「安」

 つまり新しく嫁いできた女性が嫁ぎ先の廟にお参りし、その家の先祖の霊から自分の安泰(あんたい)を求める儀礼(ぎれい)をしているのが「安」です。

 古代文字を見ると女性の下に短い斜線(しゃせん)があります。これは新妻安泰の儀式の際に加えられた霊力ある衣です。この衣を通して、その家の先祖の霊が新妻に乗り移り、家人として認められて安らかな気持ちになるのです。そこから「やすらか」の意味になりました。

 「按摩(あんま)」の「按」という字は「安」に「手ヘン」(手)を加えた文字です。これは新妻を手で押(お)さえて落ち着かせている姿です。その際に手で押さえるので「おさえる、しらべる」になりました。

 「宴(えん)」を見ると「安」の「宀」と「女」の間に「日」を加える形ですね。この「日」は日月の「日」ではなく、廟の中の女性に加えられた霊力ある玉のことです。この玉を加えることによって、その人の中にある精気を盛んにし、豊かにすることを魂振(たまふ)りといいます。

 廟の中で魂振りの儀礼をする女性の姿が「宴」で、そこから「やすらかにする」「たのしむ」の意味が生まれたのです。今の酒宴の意味での使用は後世のことです。

 ついでに覚えておくといいのが「晏(あん)」です。この「晏」は「宴」と同じ文字構成です。今度は「日」が「安」の上にのっている字形。この「日」も魂振りの玉で、その玉で魂振りして女性の安泰を願う儀式です。そこから「やすらか」の意味となったのです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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