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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(73)「九」 身を折り曲げた竜

2009.12.14 9:40

 漢数字に関する紹介(しょうかい)の最後は「九」をめぐる漢字です。「九」は身を折り曲げた竜(りゅう)の形です。竜の姿と思ってから、古代文字や現在の「九」の字を見てください。中国の祭りや長崎(ながさき)の「おくんち」での竜踊(じゃおど)りのように見えてきませんか。

「九」

 「九」の関連文字を一つ紹介すると「研究」の「究」がそうです。「究」は「穴」と「九」を合わせた文字。「九」は身を折り曲げた竜の形で、「究」は穴の中で身をかがめて、窮屈(きゅうくつ)な形で入りこんで、「きわめつくす」という意味の字です。

 さて竜には、この「九」に従う字形のものと、「虫」という字に従うものがあります。「九」の古代文字を見ると、これは頭部分が分かれた形をした竜です。これは雌(めす)の竜の形なのだそうです。

 これに対して「虫」の字形のほうは雄(おす)の「竜」の形です。ただし「虫」という字はもともとは昆虫(こんちゅう)の虫のことではありません。蛇(へび)や竜など爬虫類(はちゅうるい)的な動物のことです。昆虫などの小さい虫を示す虫は「蟲(むし)」が正字です。

 「虫」と「蟲」はもともとは別な字でしたが、今は「蟲」の略字として「虫」を使っています。

 古代中国の殷(いん)の前の王朝である夏の始祖とされる伝説上の王に禹(う)という王がいます。禹は黄河の治水に成功して、夏の国を治めたといわれる聖王です。その「禹」の古代文字を見てください。

 これは「九」の古代文字と「虫」の古代文字を合わせた文字になっています。「竜」は雨と水をつかさどる想像上の動物です。洪水(こうずい)の神でもあります。その雌雄(しゆう)の「竜」を合わせた字が「禹」であることから、洪水を治めて、治水に成功した神話をそのまま文字にしたのが「禹」という字であることがわかります。

 竜は中国の代表的な霊獣(れいじゅう)(聖なる動物)ですが、「竜」の古代文字を見ると、頭に「辛(しん)」(針)の字形の冠飾(かんむりかざ)りをつけています。雨水、洪水をつかさどる竜神のシンボルとして頭に飾りがついているのです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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