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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(85)「命」 神のおおせ

2010.3.8 11:38
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 「命令」という言葉の「命」の字のほうにも「令」がふくまれていることがわかりますか?

 今回はこの「令」とは何か、ということを紹介(しょうかい)して、「命」という文字についても説明したいと思います。

「命」

 この「令」は儀礼(ぎれい)用の帽子(ぼうし)をかぶりひざまずいて、神様のお告げを聴(き)いている人の姿です。古代中国では男性は人前では頭頂部を見せないのが礼儀でした。古代文字を見ると深く帽子をかぶって神様の言葉を待つ人の姿であることがよくわかると思います。

 「大統領」などの言葉に使われる「領」にも「令」がふくまれていますね。「頁(けつ)」の部分は儀礼に参加している人の厳かな横顔のことです。

 「領」は「うなずく」という意味もあるのですが、これは神様のお告げをうなずきながら聴いている人のことで、そこから「くび」「えり」の意味となりました。

 この「領」の字をふくむ熟語に「要領」があります。「要」とは女性の腰骨(こしぼね)のことで、「腰」の元の字形です。「要(こし)」と「領(くび)」は人の体の最も大切な部分ですので、物事の最も大切な点を「要領」と言います。

 また衣服で大切な部分が「領(えり)」と「袖(そで)」なので、そこから人びとを統率する頭(かしら)のことを「領袖(りょうしゅう)」と言います。

 さらに「令」は、黙(だま)って神様の意思を一心に聴く姿のことですので、そこから「無感動」の意味があります。

 ですから「令」に「冫」を加えた「冷」に「つめたい」の意味が生まれました。そこから「冷淡(れいたん)」「冷笑」の言葉などもできたのです。

 さて、その「令」に神様への祈(いの)りの祝詞(のりと)を入れる器「口」(サイ)を加えた字が「命」なのです。「命令」とは「命ずる」ことですが、それは神様に祈り、神様のお告げを受けて与(あた)えられるもののこと。つまり「命」とは「神のおおせ」の意味のことです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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