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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(89)「兆」 占いの左右対称形のひび

2010.4.5 10:59

 「億」がもともとは「神様の意思をおしはかる」意味の字だったのが、数の単位に使われていったことを前回、説明しました。それも最初は10万の意味でしたが、後に万の万倍になったのです。

「兆」

 その「億」の万倍、つまり「兆」について説明しましょう。この「兆」は「予兆」や「兆候」などの言葉にも、その感じが残っていますが、もともとは「占(うらな)い」に関係した言葉でした。

 亀(かめ)の甲羅(こうら)に穴をほって、熱した甲骨の表面に水をかけると、音を立てて甲羅にひびが入ります。そのひびの形でさまざまなことを占うのですが、そのひびの形を文字にしたのが「卜(ぼく)」です。だから「卜」に「うらなう」の意味があります。

 その「卜」の下に神様への祈(いの)りの祝詞(のりと)を入れる器「口」(サイ)を加えた字が「占(せん)」です。「占い」で知った神の意思は絶対的なので「占有」の意味ともなりました。

 「卜」は亀の甲羅で片側を焼いたひびの形ですが、「兆」は亀の甲羅の中央を境にして左右対称(たいしょう)に焼いたひびの形です。「兆」が左右対称の字形なのはそのためです。

 「卜」や「兆」で占う際には、亀の甲羅を焼いて水をかけました。その際に甲羅がはじけて裂(さ)けるので、この「兆」をふくむ字には亀の甲羅がはじけて裂ける時のはずんだ勢いや力のある意味、またふぞろいなひびの形の意味があります。

 「跳(ちょう)」は激しく躍(おど)り上がるようにとぶことですし、「挑(ちょう)」の「挑」は力をもって他のものに「いどむ」ことです。

 「跳躍(ちょうやく)」「挑戦」という言葉には、内側にたまっていた力が、はじけて外に表れていく意味をいずれもふくんでいます。

 また亀を焼いてできたひびの形は整わないものです。「眺(ちょう)」は「目」が整わず「まばたきをすること」がもともとの意味です。「目」が整わず、あらぬ方を眺(なが)めたりするので「ながめる」となったのです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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