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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(100)「誤」 言葉乱れて正常でない巫女 

2010.6.28 11:23
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 神様の前で舞(ま)い踊(おど)りながら、祈(いの)りをささげる若い巫女(みこ)さんに関する文字を何回か説明してきました。その最後に「呉(ご)」という字形をふくむ漢字を紹介(しょうかい)したいと思います。

「誤」

 「呉」の今の字形の「口」の部分は「くち」ではなくて、神様への祈りの祝詞(のりと)を入れる器「口」(サイ)です。それ以外の字形は古代文字のほうが分かりやすいですが、この部分は神前で舞い踊り、神を楽しませて祈る巫女さんの姿なのです。

 つまり「呉」は巫女さんが神への祝詞を入れる「口」(サイ)をささげて踊り、神を楽しませている文字です。だから「呉」には「たのしむ」の意味があります。また「呉」は中国の国名・地名によく使われました。

 この「呉」をふくむ字に「娯(ご)」があります。「呉」に「女」を加えた「娯」は神に「口」(サイ)をささげて舞い踊り、神を楽しませる女性のことです。意味は「たのしむ」です。「呉」と同じ意味ですが、「娯」の元の字が「呉」なのです。

 「誤解」の「誤」にも「呉」がふくまれています。神前で「口」(サイ)をささげて祈り、一心に舞い踊る巫女さんは正常な状態でない場合があります。言葉が乱れ、何を言っているのか分からない状態になってしまうのです。その状態が「誤」です。ですから「あやまり」という意味です。

 「呉」に関する字の最後は「虞(ぐ)」です。漢の劉邦(りゅうほう)と天下を争った項羽(こうう)が愛した女性に虞美人がいます。戦いで包囲されて四面楚歌(そか)となった項羽が「虞や虞やなんじをいかにせん」とうたった詩にも名を残しています。

 その「虞」は虎(とら)の頭「虍」と「呉」を合わせた形です。白川静さんは、この「虞」は虎頭(ことう)のかぶり物をかぶって舞う獅子舞(ししまい)のようなものだろうと考えていました。それは神の前で戦いに勝つことを祈る模擬(もぎ)演技でした。戦争について神意をはかるので「はかる」の意味があります。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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