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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(191)「樹」 鼓で樹木の生育うながす

2012.4.12 12:53

 樹木(じゅもく)の「樹」に太鼓(たいこ)の「鼓」の左部分の字形「sakuji191.gif(こ)」があるのが分かりますか。同じ「sakuji191.gif(鼓の支を取る)」は喜びや嬉(うれ)しいの「喜」「嬉(き)」にもあります。今回はこれらに共通する「sakuji191.gif(鼓の支を取る)」をふくむ文字の紹介です。

kanji191.gif

 「sakuji191.gif(鼓の支を取る)」は「鼓(つづみ)」の形をかいた象形文字です。右の「攴(ぼく)」は木の枝(「ト」)を手(「又(また)」の部分)で持ち、何かを打つ形。これを合わせて「鼓」は「つづみ」や「うつ」の意味となりました。

 「喜」は「sakuji191.gif(鼓の支を取る)」と「口」を合わせた字形です。「口」は耳口の「くち」ではなく、白川静さんの文字学では最も有名な発見ですが、神様へのお祈(いの)りの言葉を入れる器「口」(サイ)です。

 その「口」(サイ)に「sakuji191.gif(鼓の支を取る)」を加えた「喜」は祈るときに鼓をうち、神を楽しませることです。そこから「たのしい」の意味となりました。

 「嬉」も同様に神に鼓をうって、楽しませる文字。そのうちに人も神とともに楽しむ文字になりました。嬉しそうなさまを「嬉嬉(きき)として」と言いますが、これは楽しみ笑うときの擬声(ぎせい)語のようです。楽しむさまから「うれしい」「たのしい」の意味となりました。

 江戸(えど)の年号・嘉永(かえい)の「嘉」は「sakuji191.gif(鼓の支を取る)」に「加」を加えた文字です。「加」の「力」は農具の一つである「鋤(すき)」のことです。

 その大切な鋤に「口」(サイ)を加えて「鋤」を祓(はら)い清める字が「加」です。「嘉」は「加」にさらに「sakuji191.gif(鼓の支を取る)」(鼓)の音を加え、秋に穀物(こくもつ)が虫に食われてしまわないように祓い清める字です。

 つまり穀物の増収(ぞうしゅう)を祈る文字が「嘉」です。そこから「よい」の意味となっていったのです。

 最後は「樹」です。「樹」の「寸(すん)」は手の形。これと「sakuji191.gif(鼓の支を取る)」を合わせて、手で鼓をうつこと。

 これに「木」を加えた「樹」は「sakuji191.gif(鼓の支を取る)」の音をうちならして樹木の生育の力をうながすことを表す文字です。そこから「木」や「立ち木」を表す文字となったのです。この「樹」も農耕(のうこう)の祈りを表す文字です。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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