メニュー 閉じる
文化

文化

なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(205)「福」 神に酒樽供えて幸福を祈る

2012.7.26 11:43

 北陸三県と言えば、福井(ふくい)、石川、富山(とやま)の3県です。このうちの「福井」の「福」と「富山」の「富」に、共通した字形「sakuji205_1.gif(福のツクリ) (ふく)」がありますね。

kanji205.gif

 福井は漢字学者・白川静さんの故郷(こきょう)でもあります。その「福」など、「sakuji205_1.gif(福のツクリ)」をふくむ文字について紹介(しょうかい)しましょう。

 「福」の旧字(きゅうじ)「sakuji205_3.gif(示ヘンに福のツクリ)」は「示(じ)」に「sakuji205_1.gif(福のツクリ)」を合わせた形です。この「sakuji205_1.gif(福のツクリ)」という字は「車」の字について説明する回の「輻(ふく)」(車輪の矢のこと)の字のところでも説明しましたが、酒樽(さかだる)など下部にふくらみのある器の形です。そこから「ふくらんだもの」「みちたもの」の意味があります。

 「示」は神様へのお供(そな)えものをのせるテーブルの形です。つまり「sakuji205_3.gif(示ヘンに福のツクリ)」は神様を祭るテーブルの上に酒樽を供えて、幸福を求め祈(いの)ることで、意味は「さいわい」です。

 「富山」の「富」の「宀(うかんむり)」は先祖(せんぞ)の霊(れい)を祭る廟(みたまや)の屋根の形です。ですから、これも「福」と似(に)た文字の成り立ちで、先祖の霊に酒樽を供えている文字です。神への供え物が多いことで、そこから「とむ、ゆたか」の意味となったのです。

 「副」の字にも「sakuji205_1.gif(福のツクリ)」がありますね。これは「sakuji205_1.gif(福のツクリ)」に「sakuji205_2.gif(刈のメを取る(リットウ)) (りっとう)」を加えた文字です。「sakuji205_2.gif(刈のメを取る(リットウ))」は刀のことですから、「sakuji205_1.gif(福のツクリ)」を「刀」で二つに分けることが「副」です。

 酒樽のようにふくらんだ容器(ようき)を二つに分け、一つを正とし、他の一つを予備(よび)の「副」とするので、「副」が「ひかえ」の意味となったのです。

 「幅(ふく)」の「巾(きん)」はきれのこと。布(ぬの)の横幅(よこはば)のことから、すべての横幅を「幅」というようになりました。「横幅」という点に「sakuji205_1.gif(福のツクリ)」の「ふくらんだ」という意味合いがふくまれています。

 少し変わった字を紹介しましょう。それは「蝠(ふく)」です。「蝙蝠(へんぷく)」と書いて「こうもり」の意味です。この「蝠」の字の音が「福」に通じるので、中国では「こうもり」をめでたい吉祥(きっしょう)の文様に用いるそうです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

最新記事

関連記事 一覧へ