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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(210)「利」 穀物を刃で刈り取る 

2012.8.30 13:11
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 「利益(りえき)」「利潤(りじゅん)」など「もうけ」を意味する言葉の中に「利」があります。また「鋭利(えいり)」な刃物の「するどい」意味にも「利」は使われますね。

kanji210.gif

 この「利」について今回は紹介(しょうかい)しましょう。「利」の「禾(か)」は穀物(こくもつ)で、それを「sakuji32_1_2.gif(刈のメを取る(リットウ)) (りっとう)」(刃)で刈(か)り取るのが「利」です。

 穀物を刈り取り、もうけとするので「利」が「もうけ」の意味となり、刈り取る刃物のことから「するどい、すばやい」意味となったのです。

 その「するどい、すばやい」に関係した字が「痢(り)」です。「痢」は大便が固まらず水のようにすばやく出ることです。

 次に「利」との関連で「黎明(れいめい)」という言葉について紹介しましょう。「黎明」は「夜明け」のことですが、現代(げんだい)では「近代日本の黎明を告げる」など、比喩(ひゆ)的に新時代や文化などの始まりを言う時に使われています。

 イラスト欄(らん)に挙げてある「利」の異体字(いたいじ)と古代文字を見てください。「黎明」の「黎」の上部と同じ形ですね。「利」の異体字の右側は「sakuji32_1_2.gif(刈のメを取る(リットウ))」の形ではありません。これは牛などにひかせて田畑を耕作する農具「唐鋤(からすき)」の形です。日本語の「からすき」とは外国風の鋤という意味です。

 「利」も古代文字では「禾」(穀物)を唐鋤で刈る字です。この「唐鋤」は「犂(り)」とも書きます。これはまさに牛を使い「禾」をすく字ですね。

 そこで「黎」に戻りましょう。これは穀物の「黍(きび)」と「犂」の右上の形を合わせた字です。「黍」を「犂」で刈り取る農民は太陽の光で真っ黒に日焼けしていました。だから「黎」に「黒い」意味があるのだそうです。

 そこから「黎明」が暗黒の夜から明るい朝になっていく「夜明け」の意味となったのです。

 小中学生には少し難(むずか)しい文字の説明だったかな。でも「黎明」は大人になれば、必ず使う言葉です。「犂」で「黍」を刈り取る農民の真っ黒な姿から「黎」の文字ができたことを覚えておいてください。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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