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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(227)「植」 真っすぐ立てて植える

2013.1.24 14:02

 人間の目は横位置に 並 (なら) んでいるのに、「目」の字は 縦長 (たてなが) ですね。でも古い時代の字では横長でした。ですから「 徳 (とく) 」「 環 (かん) 」などにある横長の「 」も「目」の意味です。

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 「目」には 呪 (まじな) いの力があると考えられていて、 眉 (まゆ) に 飾 (かざ) りをつけ、さらに呪いの力を強めました。その眉飾りをつけた「目」の字が「省」です。

 「少」の部分が眉飾りで、これをつけた目で各地を見回り、ものの 本質 (ほんしつ) (本当の 姿 (すがた) )を見て、取り 締 (し) まるのが「省」です。本質を 直視 (ちょくし) (真っすぐ見ること)できる人は自分の行いも反省するので、「省」が「みる」や「かえりみる」の意味となりました。そんな人は「心」もすぐれていて「徳」の字ができたのです。

 今回はこの「直」をふくむ字の 紹介 (しょうかい) です。「直」は「十」「目」「 (札のツクリ) (いん) 」を合わせた形です。「十」は「少」の 省略 (しょうりゃく) 形。「十」と「目」で「省」です。「 」は 塀 (へい) の形で、「直」はひそかに調べて不正をただすこと。「ただす」ので「真っすぐ」の意味となったのです。

 木を植えるときに、真っすぐ立てるのが「植」です。元は「木」を植えることでしたが、後に草木のたぐいを「植物」と言うようになりました。

 「定置 網 (あみ) 」の「置」にも「直」があります。その上の「 」の部分は「目」ではありません。古代文字では「 网 (あみがしら) 」という形で、網のことです。つまり、かすみ網などを立てかけておくことを「置」というのです。

 「 増殖 (ぞうしょく) 」の「殖」の「 歹 (がつ) 」は動物の死体の残った 骨 (ほね) です。 動物性 (どうぶつせい) のものは草木の 肥料 (ひりょう) として 効果 (こうか) があります。ものを増殖させるので「ふえる、しげる」となりました。

 「 価値 (かち) 」の「値」にも「直」がふくまれていますね。この「値」には「会う」という意味があります。「直」はものの本質を直視すること。そのようにして本質を見て、人に出会うことです。その人は自分に 匹敵 (ひってき) する対等な人です。ものの本質・価値に「あたい」する人なのです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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