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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(228)「芸」 苗木を両手で土に植える

2013.1.31 18:43

 日本人は草木を愛する民族で、園芸は大好きです。熱心な園芸愛好家たちのための店が各地にありますし、「園芸」や「農芸」の名がついた学校も全国にたくさんあります。草木が 勢 (いきお) いよく成長していく 姿 (すがた) には、 誰 (だれ) でも力を 与 (あた) えられますね。

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 さて「園芸」の「芸」、「熱心」の「熱」、さらに「勢い」の「 勢 (せい) 」は 非常 (ひじょう) に関係の深い字です。そういう目で「熱」と「勢」を見てみれば、字の上部が同じ形ですね。「芸」もその 旧字 (きゅうじ) 「藝」を見れば、その 関係性 (かんけいせい) が分かると思います。

 まず、それら「藝」「熱」「勢」に共通する「 (勢の力を取る) (げい) 」の文字から 紹介 (しょうかい) しましょう。

 「(勢の力を取る) 」のもともとの形は左の「 (陸のツクリ) (りく) 」の部分が「木」の下に「土」を書いた字形でした。そして右の「丸」の部分は「 (迅のシンニュウを取り、十が牛のノを取る) (けき) 」という字形でした。「(迅のシンニュウを取り、十が牛のノを取る) 」は両手にものを持つ形です。つまり「(勢の力を取る) 」は 苗木 (なえぎ) を両手で土に植える意味の文字です。

 そのことは「藝」(芸)の古代文字を見ると、非常によく分かります。古代文字は苗木を土に手で植えることを、そのまま字形にしています。

 「(勢の力を取る) 」だけで、その意味を表す字でしたが、草木に関することであるので、「草かんむり」がつき、後に「 云 (うん) 」の字形が加えられたようです。

 「勢」の「力」は農具の 鋤 (すき) の形です。「(勢の力を取る) 」は両手で苗木を土に植えこむ形ですから、「勢」は鋤で 耕 (たがや) して 植樹 (しょくじゅ) することを表している文字です。

 深く耕して植えこむことで、木が成長の勢いを得ることを「勢」といい、「いきおい、ちから」などの意味となりました。

 「熱」は「(勢の力を取る) 」に「 (烈の列を取る(レッカ)) (れんが) 」を加えた文字です。「(烈の列を取る(レッカ)) 」は「火」のことです。木を植えるのに、なぜ「火」を加えたのでしょうか。

 苗木を植えて、育てるには、温熱(あたたかいこと)の時がよいということから、「火」も加えたのだろうと、白川静さんは考えておりました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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