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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(229)「市」 市の立つ場所を示す標識

2013.2.7 11:56

 「市区町村」の「市」という文字を白川静さんは象形文字の一つに数えています。どんなものの形か、分かりますか?

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 これは 市 (いち) の立つ場所を 示 (しめ) すために立てた 標識 (ひょうしき) のことです。市が開かれる所には多くの人々が集まるので、高い標識を立て、 監督 (かんとく) 者も 派遣 (はけん) したそうです。

 古い字形では上に「止」(足の形)を加えた形もありますが、その部分は「市」の字には残っていないので、象形文字に分類されたようです。

 「市」の古代文字の下の部分は「 朿 (し) 」という字です。「朿」は標識の木のことです。この木は軍門にも立てられましたし、 交易 (こうえき) を行う市場の門にも立てられました。

 「朿」は「しるしの木」の意味のほかに「とげ」の意味もあります。地面に 刺 (さ) せるような木ですから、「朿」をふくむ文字は「細くて長い形のもの」の意味があります。

 「朿」に「 (りっとう) 」(刀)を加えた「 刺 (し) 」は「刺す」意味の字です。「刺殺」など 実際 (じっさい) に刺す意味にも使われますが、「風刺」などそれとなく「そしる」意味にも使います。

 「朿」を二つ合わせた「 棘 (きょく) 」は「とげのあるいばらの木」のことです。科挙は中国での役人の登用試験のことです。その試験場を「 棘囲 (きょくい) 」というそうです。不正をなくすために、試験場の周囲をいばらで囲んだことから生まれた言葉です。今の日本なら 携帯 (けいたい) 電話の電波が 届 (とど) かないようにするようなことですかね...。

 みなが知っていて、一番使う「朿」をふくむ漢字は「 策 (さく) 」でしょう。この「策」のもともとの意味は馬を打つ「むち」のことです。「 政策 (せいさく) 」などの「はかりごと」の意味は、文字を記す「 簡策 (かんさく) 」からできたものです。

 「簡策」は元は「簡冊」と書きました。昔、字を書くのに用いた木や竹のふだのことで、そこから手紙、書物の意味になりました。その意味での「策」は字を書き記すものなので、 策略 (さくりゃく) など「はかりごと」の意味となっていきました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

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