メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(230)「責」 納税物に目印の木を立てる

2013.2.14 14:03

 増(ふ)え続ける国債(こくさい)の処理(しょり)に日本の政治(せいじ)は追われています。昔から累積(るいせき)した問題なので、現在(げんざい)の政府だけの責任(せきにん)ではありませんが、ほとんどの政権(せいけん)が実績(じっせき)を残せないまま、短期間に退場(たいじょう)していくという状態(じょうたい)が続いています。

kanzi230.JPG

 でもここは政治ではなく、漢字の話です。「国債」の「債」、「累積」の「積」、「実績」の「績」に「責任」の「責」がふくまれていますね。

 これらに共通する「責」は「朿(せき)」の下に「貝」をかいた形が元の字でした。下の「貝」は貨幣(かへい)の代わりにもなった貴重(きちょう)な子安貝で、財物(ざいぶつ)の意味です。上の「朿」は「し」とも読みますが、先の鋭(するど)くとがった木のことです。軍門や市場の門の目印の木に使いましたが、何かを突(つ)き刺(さ)す木としても用いられました。

 税(ぜい)として納(おさ)める財物の上に「朿」を立てて印の木とすることを「責」と言いました。「責」は税の意味から、税を「もとめる」「とりたてる」などの意味となり、責務(せきむ)としての「つとめ」の意味にもなっていきました。

 「積」の「禾(か)」は稲(いね)などの穀類(こくるい)のこと。つまり税として納める農作物を「積」と言いました。多くの「積」を集め、積み上げて納税(のうぜい)するので、「つむ、つみあげる」などの意味となったのです。

 「績」は税として納める織物(おりもの)のことです。その「績」が規格(きかく)通りによく納入されることを「成績」と言いました。そこから「糸をつむぐ」意味となり、また手柄(てがら)の意味ともなりました。

 「債」は元は納税義務(ぎむ)のことをいう字でした。後に貸借(たいしゃく)関係で、支払(しはら)い義務のある負債、「かり」の意味となりました。

 「責」は支配地(しはいち)から税を徴収(ちょうしゅう)することですが、その支配の及(およ)ぶ所を「蹟(せき)」と言い、今は「支配の跡地(あとち)」の意味に「蹟」を使います。神聖(しんせい)な遺跡(いせき)を「聖蹟」と言います。

 また「積」のように「責」に細かく小さいものを連ね重ねる意味があります。「簀(す)の子」の「簀」はその意味を受ける字です。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「責」は小学5年生で学ぶ漢字です。「積」は小学4年生で学ぶ漢字、「績」は小学5年生で学ぶ漢字です

最新記事