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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(233)「胃」 胃袋の中に物のある形

2013.3.7 16:38

 「書けなくてもいい、読めればいい」。2010年に常用(じょうよう)漢字が改定された際(さい)に、こんな漢字も加えることになりました。「鬱(うつ)」がその代表のように論議(ろんぎ)されました。

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 他にどんな字があるのか、常用漢字改定にかかわった人に聞きましたら、「語彙(ごい)」の「彙」もその一つだそうです。その「彙」も常用漢字に加わりました。この「彙」についての紹介です。

 よく見ると「彙」にも「果」がありますね。これまで説明してきた「果」は、木の上に果実がある形のことでした。

 でもこの「彙」の「果」はまったく異(こと)なる文字です。「彙」の全体が、ハリネズミの姿(すがた)をかいた象形文字なのだそうです。ハリネズミは外敵に対するとき、毛を立てて球形となり、蝟集(いしゅう)(多く寄り集まる)します。イラスト欄(らん)に挙げておきましたが、「彙」の異体字(いたいじ)が「蝟」という文字です。

 でも「蝟集」の「蝟」のほうは、人の臓器(ぞうき)の「胃」と関係のある文字です。「胃」は「田」と「月」を合わせた形。「田」は胃袋(いぶくろ)のことで、古い文字では「田」の中に物がある形にかかれています。「田」の中の点々がそうです。それに人体の五臓(ごぞう)を示(しめ)す「月」(肉づき)を加えて、「胃」の文字ができました。

 「胃」の中にたくさん物が集まるので「蝟集」という言葉も生まれたのです。「蝟」にもハリネズミの意味や「集まる」という意味があります。

 同じハリネズミと「集まる」ということを意味する字ですが、「彙」が先に、「蝟」のほうは後にできた字のようです。「語彙」には「彙」のほうを、「蝟集」には「蝟」のほうを使います。

 もう一つ「胃」の関係文字を紹介(しょうかい)すると「謂(い)」があります。「いう」という意味に使われることが多いですが、元は「名付ける」意味の文字でした。名付けるということから、「思う」との意味もあります。つまり思いが集まる行為(こうい)が名付けるということなのでしょう。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「胃」は小学4年生で学ぶ漢字です

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