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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(234)「悪」 不吉な凶事に関する心情

2013.3.14 14:16

 米国の大統領(だいとうりょう)府ホワイトハウスを漢字で「白堊館(はくあかん)」と書きます。白い建物は「白堊(白亜(はくあ))の殿堂(でんどう)」と呼(よ)ばれます。その「白堊」「白亜」の「堊」「亜」と何なのか。これを紹介(しょうかい)しましょう。

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 まず「亜」の旧字(きゅうじ)「亞」と、その古代文字を見てください。四隅(よすみ)がない四角形の形です。これは古代中国の王や貴族(きぞく)を埋葬(まいそう)した地下の墓室(ぼしつ)の平面形。四隅がないのはそこに邪悪(じゃあく)な悪い霊(れい)がひそむ恐(おそ)れがあるので事前にくりとってあるのです。

 古代中国では「亜」という職(しょく)についている人がいて、それは神に仕える人でした。その職は族長(ぞくちょう)に次ぐ2番目の人でした。そこから「亜」は「つぐ、第2」の意味に使われるようになりました。

 「白堊館」「白堊の殿堂」の「堊」は白い土のことです。古代中国では王や貴族の墓(はか)の棺(ひつぎ)を納(おさ)める部屋の天上や壁(かべ)を白土で塗(ぬ)ったことからできた字です。白堊の殿堂という名前はかっこいいですが、実は人の遺体(いたい)が入った棺を安置する部屋の白さのことでした。何か不吉(ふきつ)な感じもありますね。

 そんな意味を受けついでいる文字が「悪」です。その「悪」の旧字「惡」は「亞」「心」を合わせた文字です。「亞」は王族の死体を安置する部屋の象形文字ゆえに凶事(きょうじ)の意味があり、この心情(しんじょう)を「悪」と言います。

 これに関連して覚えてほしい文字があります。それは「醜悪(しゅうあく)」の「醜」です。イラスト欄(らん)にあるのは古代の文字ではなく古代の「マーク」です。

 現在(げんざい)の「醜」の「鬼(おに)」の部分は「鬼」ではなく、3筋(すじ)にたばねた髪(かみ)を大きく強調している人の形をしています。左は神を祭る酒で、それを汲(く)んでいる姿です。何かにたたりがあると考えられた時に「醜」の儀式(ぎしき)が行われたようです。普通(ふつう)の時の姿(すがた)とたいへん異(こと)なるものなので「みにくい」意味となったようです。

 これが「亞」に囲まれていますので、それはお墓の中での儀式であったと思われます。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「悪」は小学3年生で学ぶ漢字です

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