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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(235)「実」 貫いた貨幣を廟に供える

2013.3.21 15:23

 漢字では「貝」をふくむ文字がたくさんあります。この「貝」は南海の海でとれる子安貝です。

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 内陸部で生活する古代中国の殷(いん)、周王朝の人たちにとっては子安貝はたいへんな貴重(きちょう)品でした。金属製(きんぞくせい)の貨幣(かへい)が普及(ふきゅう)するまでは、貨幣の代わりに使われましたので、経済(けいざい)、財産(ざいさん)関係の文字の中にたくさん「貝」の字形が残っています。

 その子安貝にひもを通してつづり、二連を一組とした形が「朋(ほう)」です。貝を数える時には「貝五朋」とか「貝十朋」とか数えました。「朋」は二連を一組とするので、一対をなすものです。友達のことを「朋友」と言い、「朋」に「とも、仲間」の意味がありますが、この二連一組の形から意味が生まれています。

 二連ではなく、この「貝」を一連に貫(つらぬ)くことを「貫(かん)」といいます。上の「かん(かん)」は貝をとじて連ねた形です。

 貝の貨幣を一連として連ねるので「つらぬく」意味になりました。ものを貫く意味から、時間的につながる意味などにもなりました。

 その「貫」に「りっしんべん(情の青を取る(リッシンベン))(りっしんべん)」(心)を加えたのが「慣(かん)」です。「貫」の時間的につながる、続く、久(ひさ)しいという意味に、心情(しんじょう)を表す「りっしんべん(リッシンベン))」を加えて「なれる、ならす」の意味になりました。

 「慣行」「慣習」「慣例」などの言葉には、みな時間的に連なる意味がふくまれています。

 もう一つ、現在(げんざい)の字形では「貫」との関係が分からなくなってしまった文字を紹介(しょうかい)しましょう。

 それは「実」です。「実」の旧字「實」は「宀(うかんむり)」と「貫」を合わせた文字です。

 「宀」は先祖(せんぞ)の霊(れい)を祭る廟(みたまや)の屋根の形です。「貫」は貝の貨幣を貫いてつづり合わせたものです。貫いた貨幣を廟に供(そな)えるのが「実」(實)です。つまり豊(ゆた)かな供え物のことで、そこから「みちる」意味になりました。

 中身が充実(じゅうじつ)した状態のものの意味となり、「みのる」や「み」の意味に用いるようになったのです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「実」は小学3年生で学ぶ漢字です。「貝」は小学1年生で学ぶ漢字、「慣」は小学5年生で学ぶ漢字です

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