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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(236)「貴」 両手で持つ貴重な子安貝

2013.3.28 15:57

 子安貝は 非常 (ひじょう) に 貴重 (きちょう) な貝でしたので、古代中国では 貨幣 (かへい) の代わりにも使われました。その「貨幣」という言葉は、どんな文字なのでしょうか。そのことを最初に 紹介 (しょうかい) したいと思います。

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 この子安貝の後には 青銅 (せいどう) や 織物 (おりもの) が 銭 (ぜに) として使われました。「幣」は絹の布のことで、昔は通貨の代わりにも使われたのです。それゆえに 銅銭 (どうせん) が 普及 (ふきゅう) した後も通貨を「幣」と言いました。刀の形の銅銭を「刀銭」「刀貨」と言いますが、「刀幣」とも言いました。

 「貨幣」の「貨」の「化」の部分は2人の死者が横たわっている形。生から死へと変化することを表す字が「化」です。

 「貝」はお金の意味。「化」の「変化する」ことから「 交換 (こうかん) できる」という意味が生まれ、「貨」が「ぜに、たから」の意味となったのです。

 子安貝は「貴重な貝」でしたが、その「貴」にも「貝」の字がふくまれていますね。「貝」の上にある字形は「 興 (こう) 」や「 學 (がく) 」(学の 旧字 (きゅうじ) )の上部にある形と同じです。「興」では「同」の両側にある形、「學」の「 爻 (こう) 」の両側にある形です。

 これは両手で何かを 捧 (ささ) げ持つ形で、「貴」は子安貝を両手で持つ形です。今の字より古代文字のほうが分かりやすいです。それは貴重なものを 扱 (あつか) う 行為 (こうい) なので「とうとい」の意味となりました。

 「 貿易 (ぼうえき) 」の「貿」にも「貝」がありますね。「貿」の上は「 卯 (ぼう) 」という字形で、これは神様へのお祭り 際 (さい) に、 供 (そな) えられる生けにえの肉を二つに 裂 (さ) く形の文字です。二つに分けるところから「交換する、かえる」の意味が生まれました。

 「貿」の下の「貝」は貨幣として使われた子安貝のことですから、この「貿」は貨幣を使って売り買いして「あきない」する意味に使うのです。

 「 財産 (ざいさん) 」の「財」にも「貝」があります。「才」には「材料」の意味があって、それと「貝」を合わせて「 財宝 (ざいほう) 」(たからもの)の意味となったのです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「貴」は小学6年生で学ぶ漢字です。「貨」は小学4年生で、「貿」は小学5年生で、「財」は小学5年生で学ぶ漢字です

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