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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(237)「賛」 神の助けで物事が実現

2013.4.4 13:19

 子安貝はタカラガイ( 宝貝 (たからがい) )の別名です。タカラガイは 妊娠 (にんしん) した 女性 (じょせい) が、これを 握 (にぎ) っていれば安産すると言われていたので「子安貝」とも 呼 (よ) ばれるようになりました。

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 「宝貝」の「宝」にも「貝」の字形はふくまれています。これは 現代 (げんだい) の字形では分かりませんが、「宝」の 旧字 (きゅうじ) 「寶」ならよく分かります。

 「寶」の「 宀 (うかんむり) 」は 先祖 (せんぞ) の 霊 (れい) を祭る 廟 (みたまや) のことです。下の「貝」は子安貝。「王」は 宝石 (ほうせき) の「 玉 (ぎょく) 」のこと。「 缶 (ふ) 」は土 製 (せい) の酒や水をいれる器です。

 これらの物を先祖の廟に供える文字が「寶」で、その 供 (そな) えられた物を「たから、たからもの」と言います。

 子安貝には単に 貴重 (きちょう) なものという以外に、安産を 保障 (ほしょう) するなど 呪 (まじな) い的な 要素 (ようそ) があったのです。

 外国からのお客さんを 迎 (むか) える「 迎賓館 (げいひんかん) 」の「賓」にも子安貝の「貝」がふくまれています。この「賓」の「宀」は廟のことです。その下は古代文字が分かりやすいですが、「万」の字形です。この「万」はいけにえの動物の後ろ足の形です。

 それに呪いの道具として「貝」を供えて祭り、神様を 迎 (むか) える 儀式 (ぎしき) が「賓」です。その迎える神様は他から来た客神( 異 (こと) なる族の神)でした。

 それが、後に人の「客」の意味となり、客を「もてなす」意味となっていったのです。

 その神を迎える儀式を 水際で行う字が「賓」 に「 サンズイ (さんずい) 」(水)を加えた「浜」(濱)です。そこから「浜」が「はま、みぎわ」の意味になりました。

 もう一つ呪いに関係した子安貝の字を紹介しましょう。それは「 賛 (さん) 」です。「賛」の旧字「贊」の上の「先」は「 簪 (かんざし) 」の形。「贊」は「貝」に2本の簪をそえて神に助けを求めて 祈 (いの) ることです。簪も呪いに使われました。

 「簪」「貝」をそえた祈りに神が同意し、神の助けを受けて物事が実現することから、神様をたたえることを「賛」と言い、「たたえる」の意味となりました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「賛」は小学5年生で学ぶ漢字です。「宝」は小学6年生で学ぶ漢字です

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