メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(240)「員」 円形の鼎を意味する「貝」

2013.4.25 14:16

 古代中国では貴重(きちょう)な子安貝が貨幣(かへい)代わりに使われたので「貨」「 財(ざい)」など、お金に関する文字で「貝」をふくむ漢字がたくさんあります。でも「貝」の字形が子安貝の意味だけではなく、青銅(せいどう)器製(せい)の器「 鼎(かなえ)」の 省略(しょうりゃく)形である場合もあります。

240.JPG

  紛(まぎ)らわしいですが、「鼎(てい)」の省略形の「貝」をふくむ文字を紹介しましょう。その代表的な文字は「円」です。「円」は今の字形では「貝」との関係がわからないですが、 旧字(きゅうじ)「圓」ならばよく分かります。

 その「円」(圓)の説明の前に「圓」の「囗」の中にある「員」の紹介(しょうかい)をしたいと思います。それは「員」が「圓」の元の文字だからです。

 「員」の下の「貝」が「鼎」の省略形です。「鼎」は煮炊(にた)き用の青銅器で、お祭りの際(さい)に用いる器としても使いました。上部の「口」は古代文字では「○」の形をしています。つまり「員」は円形の「鼎」の意味でした。

 そこから「まるい」意味を表す文字になったのですが、次第に「員」が員数など「かず」の意味に用いられるようになったので、さらに「員」の外周を円形に囲う(字形は四角形ですが)ために「囗」を加えて、「まるい」意味の「圓」(円)の文字ができたのです。

 流星の燃(も)え残りなどが宇宙(うちゅう)から地球上へ落下してきた「 隕石(いんせき)」の「隕」も円鼎に関連した文字です。「員」には、まるくて転がる意味があります。「 コザト(こざとへん)」は神様が天と地を昇降(しょうこう)する階段(かいだん)で、神様のいる所の意味です。「隕石」が落ちて転がった所を 聖(せい)なる地として祭ったのでしょう。「隕」の意味は「おちる」です。

 「 余韻(よいん)」とは音や文章の終了(しゅうりょう)後に残る趣(おもむき)のことです。その「韻」の「員」は「まろやか」の意味で、趣のある「ひびき」のことです。

 「 損(そん)」は円鼎の中の神への供(そな)え物を「 手」で 減 (へ) らす、または円鼎そのものを壊(こわ)す文字です。そこから「そこなう」意味となりました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「員」は小学3年生で学ぶ漢字です。「円」は小学1年生で学ぶ漢字、「損」は小学5年生で学ぶ漢字です。

最新記事