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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(245)「波」 うねうねと続く水

2013.5.30 14:36

 「皮肉」「波乱(はらん)」「破壊(はかい)」の言葉の中に「皮」の字があります。でも「皮肉」の「皮」の音は「ひ」ですが、「波乱」「破壊」の「波」「破」の音は「は」ですね。今回は「は」の音で読む「皮」の関係字の紹介(しょうかい)です。

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 まず「波」から。「皮」は獣(けもの)の皮を手で引きはがしている形の象形文字です。引きはがした皮なので、「皮」に「うねうねと続くもの」「傾(かたむ)くもの」の意味があります。その「皮」に「サンズイ(さんずい)」を加えた「波」は「うねうねと続く水」のことです。

 「破」の「皮」も獣の皮を手で引きはがしている意味です。それに「石」を加えた「破」は「石の表面が砕(くだ)けはがれること」です。そこから「やぶる、こわす」などの意味となりました。

 不公平で偏(かたよ)った考えのことを「偏頗(へんぱ)な考え」と言います。この「偏頗」の「頗(は)」の「頁(けつ)」は横から見た人の顔の部分です。それに「皮」を合わせた「頗」は顔が、つまり人の姿勢(しせい)が一方に傾くことです。そこから公平や釣(つ)り合いを失うことを「偏頗」と言うのです。

 また釣り合いがとれずちぐはぐなことを「跛行(はこう)」と言います。「跛」は「足」が不自由で歩行が偏って困難(こんなん)なことです。

 もう少し紹介しましょう。「波」の下に「女」を加えたのが「婆(ば)」です。 現在 (げんざい) は年取った女性(じょせい)の意味に使いますが、元は「婆娑(ばさ)」という言葉からきているそうです。

 「波」にうねうねと動く意味がありますが、それに「女」を加えた「婆」は女性が舞(ま)う様子。「婆娑」とはその舞うしどけない(乱(みだ)れてしまりがない)様子のことです。

 その「婆」が年老いた女性を意味するようになったのですが、そのゆっくりした動きが、女性がしどけなく舞う姿(すがた)に似(に)ていたのかもしれません。

 「疲労 (ひろう)」の「疲」は「は」ではなく、「ひ」の音の文字です。白川静さんは 詳(くわ)しく説明していませんが、疲(つか)れて、動きが乱れ、くたくたになる感覚がありますね。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「波」は小学3年生で学ぶ漢字です。「破」は小学5年生で学ぶ漢字です。

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