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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(247)「受」 「さずける」と「うける」

2013.6.13 11:52

 「手」を表す漢字で興味(きょうみ)深い字の一つは「授 (じゅ)」です。この「授」には一字中に「手」を表す字形が三つもあります。「手ヘン(てへん)」はもちろん、右下の「又(また)」も「手」の形、「爪(つめ)」も「指先」のことから「手」を表す文字です。

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 その「授」の紹介(しょうかい)の前に、右側の「受」について説明しましょう。「受」の上部「爪」と下部「又」の間にある「冖」は盤(ばん)(皿)の形。この盤の中に物を入れて「手」から「手」に渡(わた)すのです。

 この行為(こうい)を上部の「手」の側からみれば、物を下部の「手」の者に「さずける」意味になります。反対に下部の「手」の側の者からみれば、上部の「手」から物を「うける」意味になります。

 ですから古くは「受」は「さずける」「うける」の両方の意味に使われていました。しかし「受」がもっぱら「うける」に使われだしたので、さらに「手ヘン」を加えて「授」の字が作られ、「さずける」意味に使われるようになったのです。

 身分や位をあらわす印を身につけるための組みひものことを「印綬(いんじゅ)」と言います。「綬」はもともと礼装(れいそう)用のひざかけにつける組みひものことでした。「綬」は「糸」で「受」けるものです。

 特別功績(こうせき)のあった人を表彰(ひょうしょう)する日本の褒章(ほうしょう)の一つに「紫綬(しじゅ)褒章」があります。科学技術(ぎじゅつ)の発明・発見や学術、スポーツ・芸術における優(すぐ)れた業績(ぎょうせき)のある人に与(あた)えられるもので、受章者には紫色(むらさきいろ)の綬(リボン)がついたメダルなどが渡されます。

 「印綬」の「印」も実は「爪」をふくむ文字です。これは古代文字のほうが分かりやすいですが、今の字形の左側が「爪」の形です。右側の「卩(せつ)」は人がひざまずいて座(すわ)る形です。ひざまずく人に上から「爪」(指先)を加えている形で、強く「押(お)さえる」の意味が「印」にあります。

 それは判(はん)を押すときの動作なので「はん」の意味になり、すべてを押してしるしをつけることを「印」というようになりました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「受」は小学3年生で学ぶ漢字です。「授」は小学5年生で学ぶ漢字、「印」は小学4年生で学ぶ漢字です。

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