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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(251)「役」 武器持って辺境の守備に

2013.7.11 13:42

 漢字の部首の読み方で「るまた」と 呼 (よ) ばれる「 殳 (しゅ) 」という字形があります。片仮名の「ル」に 似 (に) たような字形と「 又 (また) 」を合わせた形ゆえにこの名前があります。

 漢字を字形から分類したときの 構成 (こうせい) の 基本 (きほん) となる「部首」としての名があるくらいですから、この「殳」がついた文字がたくさんあります。

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 「殳」の「ル」に相当する部分は「 羽飾 (はねかざ) り」の形です。「又」は「手」の形です。それを合わせた「殳」は 槍 (やり) に似た 武器 (ぶき) である 戈 (ほこ) で、つえぐらい大きさのものです。このつえ戈には 呪 (まじな) いの飾りとして羽がついています。

 この「殳」がつえ戈のことであることがわかると、関係する漢字がなるほどと 理解 (りかい) できるのです。小学校で学ぶ教育漢字のうち「殳」をふくむ文字について、何回か 紹介 (しょうかい) したいと思います。

 まず野球の「投手」などにある「投」です。「投」は、そのつえ戈「殳」と「 テ(てへん) 」(手)を合わせた字形です。「投」はつえ戈「殳」を「手」に持って 扱 (あつか) う意味です。

 そのつえ戈で 邪悪 (じゃあく) な 霊 (れい) を 殴 (う) ち 祓 (はら) うことです。そのことで邪悪なものを遠くに追い 払 (はら) う、遠くにすてるので「すてる、なげる」の意味となりました。

  西村賢太 (にしむらけんた) さんが 芥川賞 (あくたがわしょう) を受けた「 苦役列車 (くえきれっしゃ) 」という作品があります。ベストセラーとなり、 映画 (えいが) 化もされました。この「苦役」の「役」にも「殳」があります。その「役」の「 彳 (ぎょうにんべん) 」は十字路を表す「行」の左半分で「行く」意味があります。それに武器であるつえ戈「殳」を加えた「役」は武器を持って遠く 辺境 (へんきょう) に出かけて 守備 (しゅび) につくこと。つまり「兵役」「いくさ」のことです。のちに「しごと、やく、めしつかい」の意味になりました。

 「 疫病 (えきびょう) 」の「疫」にも「殳」がありますね。この場合の「殳」は「役」の 省略 (しょうりゃく) 形です。それと「 ヤマイダレ(やまいだれ) 」を合わせた「疫」は「遠くまで広く流行する病気」です。そういう流行病は悪い霊のせいだと考えられていて、お祓いをしました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「役」は小学3年生で学ぶ漢字です。「投」も小学3年生で学ぶ漢字です。

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