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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(252)「殺」 たたりなす獣つえ戈で殴つ

2013.7.18 13:33

 「るまた」と 呼 (よ) ばれる部首「 殳 (しゅ) 」の 視点 (してん) から漢字を見ると実に多くの文字に「殳」がふくまれています。この「殳」は 羽飾 (はねかざ) りのある、つえぐらいの長さの 戈 (ほこ) です。その「つえ戈」を使い、何かを殺したり、 殴 (う) ったりする字を紹介したいと思います。

korosukanzi.JPG

 まずは「殺」です。左の「メ」の下に「木」を加えた形は、たたりをなす 獣 (けもの) の 姿 (すがた) です。その獣につえ戈「殳」を加えて殴ち殺すのが「殺」です。

 でも獣を殺すのが目的ではなく、その 行為 (こうい) を通して敵からの 呪 (のろ) いが 減殺 (げんさい) (へらすこと)される 儀式 (ぎしき) が「殺」です。ですから最初の意味は「へらす」でした。「ころす」は後の意味だそうです。

  憲政 (けんせい) の神様と呼ばれた政治家・ 犬養毅 (いぬかいつよし) や1950年代、60年代に活躍した水泳自由形の選手・ 山中毅 (やまなかつよし) の「 毅 (き) 」という文字も動物をたたく字です。

 「毅」の左側「ギ(ぎ) 」の上部は、元は「 辛 (しん) 」の字形でした。古い 甲骨 (こうこつ) 文字では 竜 (りゅう) などの 聖 (せい) なる動物の頭部には「辛」の字形の飾りがついていました。おそらく「ギ 」も聖なる獣で、それを「殳」で殴って、 呪 (まじな) いの力を 刺激 (しげき) して、戦争の 際 (さい) に戦意を 鼓舞 (こぶ) したようです。そこから「つよい、たけし」の意味があるのです。

 特別な力がある動物を殴つ、その「殴」にも「殳」がありますね。「殴」の 旧字 (きゅうじ) 「毆」の「 區 (く) 」の「 匸 (けい) 」は 秘密 (ひみつ) のかくされた場所です。そこに神様への 祈 (いの) りの言葉である 祝詞 (のりと) を入れる器「口」(サイ)をたくさん置いて祈るのです。

 祈るとき「口」(サイ)を「殳」(つえ戈)で殴ち、神様をおどして祈りが 実現 (じつげん) するよう求めるのが「殴」(毆)です。

  医術 (いじゅつ) の「医」の旧字「醫」にも「殳」がふくまれています。秘密の場所「匸」に悪い霊を 祓 (はら) う力のある「矢」を置いて、かけ声をかけながら「殳」で「矢」を殴ち、その「矢」の力で病気を治したのです。酒を使って 傷口 (きずぐち) を清めたり、 興奮剤 (こうふんざい) に酒を用いたりしたので「 酉 (ゆう) 」( 酒樽 (さかだる) の形)が加えられています。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「殺」は小学4年生で学ぶ漢字です。「医」は小学3年生で学ぶ漢字です。

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