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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(256)「刻」 刀で刻んで時をはかる

2013.8.15 13:36

 核戦争(かくせんそう)などによって人類が滅亡(めつぼう)するまでの時間を象徴(しょうちょう)的に表す「終末時計」という時計があります。滅亡の時刻(じこく)を零時(れいじ)として、残されている時間を分で表します。今年1月現在(げんざい)は滅亡まであと「5分」とのことです。

256koku.JPG

 でもここで核戦争のことを紹介(しょうかい)したいのではありません。「核戦争」の「核」と「滅亡の時刻」の「刻」に同じ「亥(がい)」の字がふくまれていますね。この「亥」をめぐる字の紹介をしたいのです。

 十二支(し)の「いのしし」の意味にも使われる「亥(い)」は獣(けもの)のこと、獣の骨格(こっかく)(骨組(ほねぐ)み)の形です。そこから「亥」に「かたい」の意味があります。

 獣の骨格の「亥」として、分かりやすいのは「骸骨(がいこつ)」の「骸」です。「なきがら」の意味です。

 その「亥」に「木」を加えた「核」は「果物の実や種」の意味です。果物の実は中心にあるので「中核」「核心」などの言葉ができました。

 「刻」のほうは「亥」に「リットウ(りっとう)」(刀)を加える形。この「亥」は獣のことで、それを刀で刻(きざ)むことをいう文字です。器に刻んで印とし、時をはかることから、時刻の意味ともなったのです。

 裁判(さいばん)官を裁(さば)く裁判に弾劾(だんがい)裁判というものがあります。「弾劾」とは責任(せきにん)ある地位にある人の不正をあばいて、その責任を追及(ついきゅう)することです。

 でも「弾劾」の「劾」という字は、時を経(へ)て漢字が伝わるどこかで字形を間違(まちが)ってしまったのだろうと白川静さんは考えていました。「力」は農具の「鋤(すき)」の形ですが、元は「亥」に「力」ではなく、「殳(しゅ)」を加えた字だったのではないかという考えでした。「殳」はつえぐらいの長さの戈(ほこ)です。その戈で獣の「亥」を殴(う)ち、何かのたたりを祓(はら)う儀式(ぎしき)がありました。

 元は「亥」に「殳」を加えた字が、誤(あやま)って「劾」となってしまったようです。「弾劾」の「弾」も弓の弦(げん)を鳴らして悪い霊(れい)など祓う文字です。つまりもともとの「弾劾」とはたたりや悪い霊を祓う儀式でした。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの「刻」は小学校6年で学ぶ漢字です。

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