メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(258)「純」 布の縁に糸飾りをつける

2013.8.29 12:37

 漫画家(まんがか)・水木しげるさんの妻(つま)・武良布枝(むらぬのえ)さんが書いた「ゲゲゲの女房(にょうぼう)」がテレビドラマ化された時、水木さん自身は米寿(べいじゅ)の年でもありました。

258jun.JPG

 「88歳にもなると鈍感(どんかん)になってね、あんまり何も感じない」と、その時、水木さんは話していました。さらに世の中があまり豊(ゆた)かになると、「妖怪(ようかい)は逃(に)げるね」と言い、「人間も、もう少し豊かでない方が純粋(じゅんすい)なのかも」とも話していました。

 いやいや水木さんのことを紹介(しょうかい)したいわけではないのです。水木さんが語る「鈍感」の「鈍」、「純粋」の「純」に「屯(とん)」の字形がふくまれています。その紹介です。

 この「屯」は糸の末端(まったん)を結びとめた形で、縁飾(ふちかざ)りのことです。「屯」が「純」の元の字で、「純」とは布(ぬの)の縁に糸飾りをつけることです。昔は「屯」を「純粋」の意味にも用いていましたが、後に「屯」を「あつまる」の意味に使い、「純」が「まじらない、もっぱら」の意味となりました。

 「屯」の「集まる」意味では「駐屯(ちゅうとん)」がそうです。兵隊が「集まり留(とど)まる」のが「駐屯」です。

 「屯」は織物(おりもの)の縁の糸を結びとめた房(ふさ)飾りですので、まるく固めたものの意味があります。そこから刀などの刃(は)がまるくなり、切れ味が悪くなったものを「鈍(どん)」といい、それを人に移(うつ)して「愚鈍(ぐどん)」(愚(おろ)かで鈍(にぶ)いこと)などの言葉にも使います。

 「沌(とん)」は水が集まり、流れない状態(じょうたい)です。「混沌(こんとん)」は物事の成り行きのはっきりしないさま。

 「饂飩(うどん)」の「飩」の「屯」もまるく固まったものの意味。「食ヘンに昆飩(こんとん)」は中に餡(あん)を入れて蒸(む)した饅頭(まんじゅう)のことです。「饂飩」は日本の用法だそうです。

 「頓挫(とんざ)」の「頓」にも「屯」がありますね。「屯」は糸の端(はし)を束ね結ぶ形なので、「ゆきどまり」の意味があります。「頓挫」とは計画などが、ゆきづまることです。

 そういえば「ゲゲゲの鬼太郎(きたろう)」で有名になった妖怪「一反木綿(いったんもめん)」には縁取りがあるのでしょうかね。どうかな?(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「純」は小学6年生で学ぶ漢字です。

最新記事