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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(259)「冬」 編み糸の末端結びとめる

2013.9.5 14:56

 古代中国では「糸」は貴重(きちょう)なものでした。漢字にも「糸へん」の字が多くあります。その糸の末端(まったん)を結ぶ字が「総(そう)」や「屯(とん)」でした。日ごろ使う字に、もう一つ「糸」を結ぶ形の文字があります。それが「冬」です。

259fuyu.JPG

 「冬」の古い字形は編(あ)み糸の末端を結びとめた形ですが、その後、文字の下部に「冫(ひょう)」(氷)が加えられて、現在(げんざい)の字に近いものになりました。

 「冬」が「ふゆ」の意味に使われだし、「糸」を加えて「終」ができました。糸の末端を結び終結とするので「おわり」の意味となったのです。

 ついでに「春」「夏」「秋」も紹介(しょうかい)しましょう。まず「春」の元の字は「草カンムリ (くさかんむり)」の下に「しゅん(しゅん)」を加えた字でした。

 「しゅん」の「屯」は織物(おりもの)の縁(ふち)の糸を結びとめた房飾(ふさかざ)りの形ですが、この場合は寒い冬の間、閉(と)じ込(こ)められていた草の根を表しています。それが「日光」を受け、芽を出そうとする字が「春」の元の字です。そこから「はる」の意味となりました。

 「夏」は舞楽(ぶがく)用の冠(かんむり)をつけ、両袖(りょうそで)を振(ふ)り、足を前にあげて舞(ま)う人の姿(すがた)です。「夏」に「大きい」の意味もあります。舞楽の人の顔や体が大柄(おおがら)であったからのようです。

 作家・井上(いのうえ)ひさしさんの本名は「井上廈(ひさし)」でした。「廈(か)」は「ひさし」のある大きな家のことです。「夏」を季節の「なつ」の意味に使うことは春秋(しゅんじゅう)時代(紀元前770~前403年)ごろになって始まったようです。

 「秋」の元の字は「龝(しゅう)」の下に「レッカ」(火)を加えた形でした。「禾(か)」は稲(いね)。この場合の「龜(き)」(亀(かめ))はイナゴなど虫のこと。秋になるとイナゴが大発生して穀物(こくもつ)を食べてしまうので、イナゴを「火」で焼いて豊作(ほうさく)を祈(いの)る儀式(ぎしき)をしたのです。それが「秋」の元の文字。「虫害」が発生する季節なので「秋」が「あき」の意味となったのです。

 冬に向かう「秋」はものさびしい季節です。その季節感を表した文字が「愁(しゅう)」で「うれい」の意味です。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「冬」は小学2年生で学ぶ漢字です。「春」「夏」「秋」も小学2年生で学ぶ漢字です。

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