メニュー 閉じる メニュー
文化

文化

なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(263)「棒」 大きな木の枝

2013.10.3 12:39

 米大リーグでケン・グリフィーという選手がいました。走攻守(そうこうしゅ)そろった名選手で、イチロー選手があこがれる選手でした。そのグリフィー引退(いんたい)発表の日の試合で、イチローはサヨナラ安打を放ちました。「グリフィーに捧(ささ)げる一打」と、当時の記事にあります。

263bou.JPG

 彼(かれ)ら一流野球選手たちの高い「年俸(ねんぽう)」もしばしば話題になりますが、その「年俸」の「俸(ほう)」にも、「捧げる一打」の「捧(ほう)」にも「奉(ほう)」の字形があります。野球を中国では「棒球(ぼうきゅう)」と言いますが、この「棒」にも「奉」があります。それらのつながりの紹介(しょうかい)です。

 そのための基本となるのは「/カイ/(ほう)」という字です。これは草木がさかんに茂(しげ)るさまを表す字です。

 この「/カイ/」をふくむ字はかなりあります。例えば「峰(ほう)」は「山」「夂(ち)」「/カイ/」を合わせた形です。「夂」は下向きの足の形で、「峰のツクリ(ほう)」は伸びた木の枝(えだ)に神の霊(れい)の降(お)りる形です。神の降りてくるような木のある「山」を「峰(みね)」といいます。

 「逢(ほう)」の「しんにゅう(しんにゅう)」は道を行くことで、神異(しんい)なもの(不思議なもの)に「あう」ことです。

 舌鋒(ぜっぽう) 鋭(するど)い、とは弁舌(べんぜつ)の鋭いことを「鋒(ほこさき)」にたとえた言葉です。この「/カイ/」も伸(の)びた木の枝(えだ)で、それを金属(きんぞく)の武器(ぷき)の意味に移(うつ)したのが「鋒(ほう)」です。

 もう一つ紹介すると「蜂(ほう)」もそうです。白川静さんによると「蜂(はち)」が群(むら)がり飛んでくる音を表しているのだそうです。でも「鋒」のような針(はり)を持った虫と考えると覚えやすい字でもあります。

 さて「捧」「俸」「棒」の右の「奉」は「/カイ/」を左右の「手」で捧げ、その下にさらに「手」を加えて支えている文字です。古代文字が分かりやすいです。神が乗り移る木の「/カイ/」を持つので「たてまつる」意味です。

 「棒」は大きな木の杖(つえ)のことです。「奉」にさらに「テヘン(てへん)」(手)を加えた「捧」は「ささげ持つ」こと。「奉」は神に奉(たてまつ)り、さしあげることです。「俸(ほう)」は「人に賜(たまわ)るもの」の意味です。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの「棒」は小学校6年で学ぶ漢字です。

最新記事