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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(268)「刊」 版木を削り印刷する

2013.11.7 13:23

 村上春樹(むらかみはるき)さんの新作「色彩(しきさい)を持たない多崎(たざき)つくると、彼(かれ)の巡礼(じゅんれい)の年」が出版(しゅっぱん)7日目で100万部を刊行(かんこう)して話題です。

268kan.JPG

 その村上さんが京都大学で公開インタビューを行いました。会場に集まった人に司会者が新幹線(しんかんせん)や飛行機で来た人は?と質問(しつもん)したら、半分ぐらいの人が手を挙げていました。すごいですね。

 そんな村上春樹ブームのことではなくて、「刊行」の「刊」や「新幹線」の「幹」にふくまれる「干(かん)」に関連した字の紹介(しょうかい)をしたいのです。

 「干」は武器(ぶき)の一つで長方形の盾(たて)の形です。だから元の意味は「ふせぐ」でした。でもうまくふせぐ武器ということから「おかす、みだす」の意味もできました。他者のことに立ち入る「干渉(かんしょう)」という言葉もありますね。「干(ほ)す」の意味は「乾(かん)」と音が同じなので、できた意味です。

 さて「刊」の「干」は「おかす」ことの意味です。木をおかし、削(けず)る意味です。書物の版木(はんぎ)を「リットウ(りっとう)」(刀)で削り、印刷するのが「刊」です。

 「干」は盾ですから、真っすぐ立つものの意味があります。その意味をふくむのが「竿(かん)」です。「さお」のことですが、もともとはタケノコを表す文字だったそうです。

 さて「幹」については古代文字を見てください。「干」の部分が「木」になっています。「朝の月が人(かん)」は飾(かざ)り物がある旗竿(はたざお)のこと。それに「木」を加えた「幹の干が木(かん)」(「幹」の元の字)は根幹を意味する字です。旗竿は旗の立つ根幹のところです。「幹」の「干」も竿の意味で、旗竿の根幹のことから「幹」の字ができました。

 「肝(かん)」と「汗(かん)」にも「干」がありますね。古い字書に「肝は幹の干が木なり」とあります。「肝臓(かんぞう)」は左に三葉、右に四葉の形を持つので、木にたとえて、強い臓器である肝臓をそのように書くようです。

 「汗」は身体から出る水分のこと。その「干」も「身幹(しんかん)」(からだのこと)の意味を受けた文字のようです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「刊」は小学5年生で学ぶ漢字です。「幹」も小学5年生で学ぶ漢字です。

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