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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(270)「警」 言葉でいましめる

2013.11.21 12:46

 「あの人を尊敬(そんけい)しているんですか。驚(おどろ)き! 自分はちょっとあの人のことを警戒(けいかい)しています」

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 こんな話をすることもあるかと思います。この「驚き」「警戒」の「驚(きょう)」と「警」に、「尊敬」の「敬」の字がふくまれていますね。その関係を紹介(しょうかい)したいと思います。

 この3字のつながりを紹介するには、「敬」の左側にある字を紹介しなくてはなりません。

 これは「苟(こう)」の形をしていますが、旧字(きゅうじ)は上部が「草カンムリ」ではなく、「草カンムリの縦棒二本に挟まれた一を取る」のような形です。「苟」の上部が「草カンムリの縦棒二本に挟まれた一を取る」の字形は羊の頭をした人が跪(ひざまづ)いている形です。

 それはチベット系(けい)の羌人(きょうじん)という人たちで牧畜(ぼくちく)をする人でした。現代(げんだい)からすると、とても残酷(ざんこく)なことですが、その人たちは神へのいけにえとして捕(と)らえられていました。

 「敬」の「攵(ぼく)」の元の形は「攴」です。「攴」の上の「ト」は木の枝(えだ)(または鞭(むち))です。「又(また)」は手の形。つまり「敬」は捕(つか)まえた羌人を小枝で打つ形の文字です。

 「敬」の「口」は顔の「くち」ではなく、神様への祈(いの)りの祝詞(のりと)を入れる器「口」(サイ)です。これを置き、羌人を後ろから枝で打って、神様の意思を求め、神を責(せ)めているさまが「敬」という字です。その時の神にうやうやしく仕える心から「うやまう」「つつしむ」の意味になりました。

 この「敬」は羌人を打って、神へ願いの成就(じょうじゅ)を責め求める行為(こうい)です。ですから「敬」は自らを「つつしむ」「いましめる」という意味を持っていましたが、「敬」が「つつしむ」意味に使われるようになったので、「いましめる」という意味の字として「人」を加えて「人ベンに敬(けい)」が作られました。

 そして「敬」に「言」を加えた「警」も意味は「いましめる」です。でもこれは「言葉を発し、いましめる」ことです。

 最後に「驚」です。「馬」は驚きやすい動物ですが、この字は馬が「いましめられて」(注意されて)、驚くさまからできた文字です。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

 

【編注】今回テーマの漢字「警」は小学6年生で学ぶ漢字です。「敬」も小学6年生で学ぶ漢字です。

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