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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(276)「氏」 肉を切り分けるナイフ

2014.1.9 11:23

 古代中国では 先祖 (せんぞ) の祭りの後、先祖が同じ者が集まって食事をしました。その時、祭りに 供 (そな) えた肉を切り分けて食べるのですが、この肉を切るナイフの形を字にしたのが「氏」です。

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 切り分けられた肉を 一緒 (いっしょ) に食べる 儀式 (ぎしき) に参加する先祖が同じ者を「氏」と言い、その同族を「氏族」と言います。氏族全員で食事をすることを「氏族 共餐 (きょうさん) 」と言います。

 その「氏」の関係字の 紹介 (しょうかい) です。まず「 昏 (こん) 」です。白川静さんは「昏」の下の「日」は肉の 塊 (かたまり) だと考えていました。「昏」は 結婚式 (けっこんしき) の 際 (さい) に、「氏」で肉を切り、人びとが食べる儀式を文字にしたものです。結婚式は、 夕刻 (ゆうこく) から始まったので「昏」に「くれ、よる、くらい」の意味があります。

 この「昏」は「婚」の元の字で「めとる」の意味もあります。その「婚」は婚儀が 黄昏 (たそがれ) どきから始まるからできた字のようで「よめいり、とつぐ」の意味があります。

 2人以上が短歌の上と下の 句 (く) を 交互 (こうご) に 詠 (よ) み連ねていく詩歌「 連歌 (れんが) 」の室町時代末期の名人で「 宗祇 (そうぎ) 」という人がいます。この「祇」の字をふくむ言葉でみんなが知っているのは 祇園祭 (ぎおんまつり) でしょう。

 その「祇」の「 示 (じ) 」は神様の祭りの際に供え物をのせるテーブルの形。「氏」は氏族共餐の時に肉を切るナイフですから、「祇」は氏族を 保護 (ほご) する神のことです。訓読みでは「くにつかみ」ですし、 「やすらか」の 意味もあります。

 「氏」をふくんでよく使われる字は「紙」です。「紙」になぜ「糸」があるかというと、古くは 古綿 (ふるわた) などをすの子ですいて板に 張 (は) り、紙を作りました。だから「紙」を昔は「 帋 (し) 」と書きました。「 巾 (きん) 」は 布 (ぬの) の意味です。

 白川静さんは「紙」と「氏」の関係を 詳 (くわ) しく 論 (ろん) じていませんが、紙の材料を打ち 砕 (くだ) くということと、ナイフ(氏)で細かく切ることに関係があるのでしょうか。ともかくそのような 関連性 (かんれんせい) で 記憶 (きおく) しておくと、 忘 (わす) れないかもしれません。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「氏」は小学4年生で学ぶ漢字です。「紙」は小学2年生で学ぶ漢字です

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