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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(282)「誌」 志をしるしたもの 

2014.2.20 11:22
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 「詩は志(こころざし)の之(ゆ)く所なり。心に在(あ)るを志と爲(な)し、言に發(はっ)するを詩と爲す」

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 これは中国最古の詩集「詩経(しきょう)」序文(じょぶん)にある言葉ですが、白川静さんはこの言葉が好きだったみたいで、「字統(じとう)」「字通」「常用字解(じょうようじかい)」という自分が書いた3冊(さつ)の字書にいずれも紹介(しょうかい)しています。

 なるほど「詩は志の之く所なのか!」と思いますね。志のよく伝わってこない詩も近ごろ多いですから。さて、その「詩」と「志(し)」と「之(し)」という3字は一つの関連性(せい)を持った文字です。今回はそれを紹介しましょう。

 「詩」の右の「寺」は今は「土」と「寸(すん)」を合わせた字形ですが、古代文字では「之」と「寸」を合わせた文字になっています。「寸」は手の形ですが、「之」は「止」と同形で「足」を意味する文字です。でも「之」は「寺」「詩」については音のほうを表している字形のようです。

 「心に在るを志」として言葉に出すのが詩ですが、その詩の多くは神様の前で声をあげて歌いあげる儀式(ぎしき)の歌でした。めでたいきざしである吉祥(きっしょう)を得たり、呪(のろ)いを加えたりする呪歌(じゅか)で、後に文学性が重視(じゅうし)されて作品になっていったのです。

 そして「志」の「士」も昔の字形では「之」なのです。「之」は行く意味ですから、「こころざす」とは心がある方向に目指していくことが「志」であると白川さんは述(の)べています。

 さらに「志」の説明でも、今回紹介した「詩経」の言葉を引用した後に「志は古くは心に在る、心にしるすの意味であった」と書いてもいます。

 「雑誌(ざっし)」の「誌」にも「志」がふくまれていますね。その「誌」という文字は「心に在る志」に対して、動詞(どうし)的用法の字で「しるす」と読み、「しるされたもの、かきつけ、記録」を言います。

 もう一つ「志」をふくむ字を紹介しましょう。「痣(し)」がそれです。「ヤマイダレ(やまいだれ)」と「志」を合わせた「痣」は「しるし」という意味で「あざ・ほくろ」のことです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「誌」は小学6年生で学ぶ漢字です。「詩」は小学3年生で学ぶ漢字、「志」は小学5年生で学ぶ漢字です

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