メニュー 閉じる

47News

文化

文化

なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(283)「点」 小さな黒い点 

2014.2.27 12:09
Share on Google+ このエントリーをはてなブックマークに追加

 芥川(あくたがわ)賞は「新人作家の登竜門(とうりゅうもん)」といわれます。この「竜門」は中国の黄河(こうが)にある激流(げきりゅう)の名前で、急流を登るコイが「竜門」を登れたら、そのコイは竜になるといわれているので「登竜門」の名があるのです。

283tenn.JPG

 でも多くのコイは「竜門」の激流を登ることができません。難(むずか)しい試験などで、その「竜門」を登れなかった人たちを「点額(てんがく)」と言います。「点」に傷(きず)の意味があり「竜門」を登れず、額(ひたい)を岩にぶつけて、傷をつけて帰ることが「点額」で、「落第」の意味です。

 その「点」の旧字(きゅうじ)は「點」。つまり「点」(點)は「小さな黒い点」のことです。この「点」に関係した文字の成り立ちを紹介(しょうかい)しましょう。

 「点」(點)の中にある「占(せん)」は「卜(ぼく)」と「口」を合わせた文字です。「卜」は亀(かめ)の甲羅(こうら)の裏側(うらがわ)に穴(あな)を掘(ほ)って、それを焼いて表面に出来た「卜」形のひび割(わ)れのことです。そのひび割れの形で、うらなうのです。それゆえに「卜」に「卜(うらな)う」という意味があります。

 「占」の下の「口」は「くち」ではなくて、神様への祈(いの)りの言葉を入れる器「口」(サイ)です。神に祈って「卜う」ので「占」も「うらなう」という意味です。「点」の下の「れんが(れんが)」は火です。

 占いの際(さい)の穴のことから、「占」には「小さく、部分的」という意味があります。「店」という文字にも「占」がありますね。「广(まだれ)」は建物の屋根の形です。この場合の「占」は「小さな物置台」のことです。つまりお堂の隅(すみ)のほうにある「小さな物置台」に商品を並(なら)べることから「みせ」となり、のちに「やど」の意味にもなりました。中国ではホテル、宿のことを「飯店」と言います。

 「苫小牧(とまこまい)」や「苫屋」の「苫」にも「占」があります。「苫」とは「むしろ、こも」のことです。粗末(そまつ)でわびしい小屋という意味の「苫屋」は、日本の用法ですが、でもこの「苫」にも「小さく、部分的」のニュアンスがありますね。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

最新記事

関連記事一覧