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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(285)「浴」 身を洗い清めて祈る 

2014.3.13 11:30
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 だれでも 余裕 (よゆう) のある生活を 欲 (ほっ) します。でも 現実 (げんじつ) の世界は 厳 (きび) しいもの。せめて 温泉 (おんせん) にでも 入浴 (にゅうよく) し、のんびりしながら 世俗 (せぞく) の 垢 (あか) を落としたいですね。

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 さて以上の文章に「裕」「 欲 (よく) 」「浴」「俗」という「谷」の字形をふくむ漢字が4字もあることが分かりますか。それらの 紹介 (しょうかい) をしたいのです。

 この「谷」という字には二つの意味があります。みながよく知る山の「谷」のほかに、もう一つ、神様の 現 (あらわ) れを 示 (しめ) している「谷」があります。

 今回紹介する「裕」「欲」「浴」「俗」の「谷」は、いずれも 祈 (いの) ると、神様が現れて神気が満ちるという意味での「谷」です。 先祖 (せんぞ) を祭る 廟 (みたまや) に神への言葉を入れた器「口」(サイ)を 供 (そな) えて祈ると、それに 応 (こた) えて神の 姿 (すがた) が現れるのが「 容 (よう) 」です。「谷」の上の「 宀 (べん) 」は廟の屋根の形です。

 その現れた神様の姿を見たいと思う文字が「欲」です。「欠」は口を開けて願うことです。

 そのように「欲」はもともとは神の現れを願う 神聖 (しんせい) なものでした。そこから「ほっする、ねがう」の意味となりました。それに対して人間の欲望を言う時には、もとは「 慾 (よく) 」の字をあてました。

 神の現れを祈っていると、その神気が、着物の上にゆたかに現れることを「裕」と言います。「ゆたか、ゆるやか」の意味があります。着物は 霊 (れい) などが宿るものでした。

 また神に祈るためにみそぎをすることを「浴」と言います。みそぎは神事などの前に水で身を 洗 (あら) い清め、けがれを落とすこと。そこから「浴」に「 湯浴 (ゆあ) み」(湯に入って体を洗うこと)や「あびる」の意味があります。

 また「俗」の「谷」も、祈りの言葉を入れた「口」(サイ)を供え、神の現れを祈る字ですが、そのような 一般 (いっぱん) 的な 信仰 (しんこう) や 儀式 (ぎしき) の 在 (あ) り方を「俗」と言うのだそうです。そこから「ならわし、世のならい、世のつね」などの意味となりました。またさらに「俗」には「いやしい、ひくい」などの意味もあります。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

【編注】今回テーマの漢字「浴」は小学4年生で学ぶ漢字です。「欲」は小学6年生で学ぶ漢字です。

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