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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(295)「備」 戦争に備える 

2014.5.22 15:30
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 ひどく疲(つか)れることを「疲労困憊(ひろうこんぱい)」と言います。この「困憊」の「憊」に「備(そな)える」という意味の「備(び)」が入っています。それはなぜでしょう。

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 そのことについて、白川静さんは字書「字統(じとう)」に「あらかじめすることを予備・備忘(びぼう)という」と記し、続いて「これらのことに気疲(きづか)れすることを憊(はい)という」と書いています。なるほど試験などは予備的に準備(じゅんび)するうちに、気疲れして、疲労困憊してしまいますね。うまいことを言うものだなあと感心しました。

 さて、その「備」は何に備えるのか。それを紹介(しょうかい)しましょう。「備」の右側の字形は矢を入れて背(せ)に負う箱形の武具(ぶぐ)「箙(えびら)」のことです。

 「箙」の古代文字を挙げておくと分かりやすいと思いました。これは説明しなくても、矢を入れて背に負う箱形の武具であることが分かりますね。その「箙」を「人」が背負う字形が「備」です。

 つまり「備」の元の意味は、戦いに「そなえる」ことです。後にすべてに「そなえる、そなわる」の意味となりました。

 そして最初に紹介した「憊」です。「備禦(びぎょ)」とは備え防禦(ぼうぎょ)すること。つまり何のための防禦かと言えば、まず軍事に関することでしたが、対策(たいさく)を用意すること、備えることに心が疲れることが「憊」となったのです。

 「備」の右は矢を入れて背に負う「箙」ですが、「備」の「人」の代わりに「米」を加えた「糒(び)」は、軍隊などの食糧(しょくりょう)対策として用意する「ほしいい」のことです。

 また「箙」は竹や草などでも作られましたが、オットセイなどの皮で作ったものも多かったようです。「鞴(ひ)」という文字も「箙」のことです。

 この「鞴」を日本では火をおこすための送風器「ふいごう」の意味に用います。ふいごうは獣(けもの)の皮、特にタヌキの皮を用いた革袋(かわぶくろ)などで、古代から金属(きんぞく)の精錬(せいれん)や加工に使用しました。足で踏(ふ)んで風を送る大型の鞴を「踏鞴(たたら)」と言います。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

 【編注】今回テーマの漢字「備」は小学5年生で学ぶ漢字です

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