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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(300)「字」 廟に出生報告をする儀式 

2014.6.26 12:30
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 「漢字」の体系(たいけい)的仕組みを紹介(しょうかい)してきましたが、この「漢字」の「字」について説明しましょう。

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 「字」の「宀(うかんむり)」は廟(みたまや)の屋根の形です。「子」が生まれ、一定の日数が過(す)ぎて養育の見込みが立つと、先祖(せんぞ)の霊(れい)を祭っている廟に出生の報告(ほうこく)する儀式が行われ、幼名を付けました。それを「字(あざな)」といい、その幼名時の「字(あざな)」を「小字(しょうじ)」といいます。

 さらに一定の期間が経過(けいか)すると、廟に成長をつげ、命名の儀式が行われ、名前が付けられました。その時に名と何らかの関係がある文字が選ばれて「字(あざな)」が付けられました。そして実名を呼(よ)ぶことは避(さ)けられ、「字(あざな)」を通名として使用しました。つまり「字」は出生報告の儀式で、それで養育することが定まり、「字(あざな)」が付けられるので、「字」が「やしなう、あざな」の意味となりました。

 中国春秋時代の思想家・孔子(こうし)の姓(せい)は「孔」、名は「丘(きゅう)」、字は「仲尼(ちゅうじ)」です。その「孔子」の「孔」にも「子」の字形があります。古代文字を見ると、後頭部の頭髪(とうはつ)を剃(そ)るような曲線を「子」に加えた文字が「孔」になっています。つまり頭に穴(あな)のようなものがある字形で「あな」の意味となりました。「鼻孔」とは鼻の穴です。乳児(にゅうじ)の時に、成育を祈って頭髪を剃る儀式のようなものがあったのかもしれません。

 そう言えば「乳児」の「乳」は、この「孔」と「爪(つめ)」を合わせた文字です。「爪」は「手」のこと。頭髪を剃った子どもに「手」(爪)を加えている文字が「乳」です。

 これは乳児に授乳(じゅにゅう)している姿(すがた)です。古い甲骨(こうこつ)文字ではまさに授乳の形です。授乳から「ちち」の意味になりました。

 「好」の甲骨文字も女が子どもを抱(いだ)く形です。もともとは母親が幼児(ようじ)をかわいがることをいう字です。母の子に対する愛情(あいじょう)から、姿が「うつくしい、したしい」の意味となり、すべての状態(じょうたい)が良好で「よい」意味や良好のものを「このむ」意味となりました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

 【編注】今回テーマの漢字「字」は小学1年生で学ぶ漢字です。「乳」は小学6年生、「好」は小学4年生で学ぶ漢字です

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