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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(番外編1)「儒」 雨乞いをする人たち 

2014.7.3 10:04
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 人の生きる道を求めて、中国の春秋時代の思想家・孔子(こうし)が開いた教えが「儒教(じゅきょう)」です。また経済(けいざい)関係の用語に「需要(じゅよう)と供給(きょうきゅう)」の「需給」という言葉があります。この「儒教」の「儒」は「需要」「需給」の「需」に「人」を加えた文字ですね。その関係について、紹介(しょうかい)したいと思います。

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 その「儒」「需」の元になる字は「而(じ)」です。「而」は結髪(けっぱつ)のまげがない人の正面形の姿(すがた)です。それは神に仕える巫祝(ふしゅく)たちの姿です。続く日照りに対して、雨乞(あまご)いをする巫祝の姿です。そんなつもりで「而」を見てみれば、髪(かみ)の毛を切った人に見えてきます。

 その「而」に「雨」を加えたのが「需」です。つまり「需」とは日照りの時に雨乞いをし、雨を求め待つという漢字。そこから「もとめる、まつ」の意味となりました。

 その雨乞いに従事(じゅうじ)する下級の巫祝が「儒」です。「儒」はお金持ちの家の葬儀(そうぎ)をあてにする葬儀屋集団(しゅうだん)でもありました。そのような下層(かそう)巫祝の家の出身だった孔子が打ち立てた教えが儒教です。

 つまり「儒教」「儒家」「儒者」の「儒」には、その出身である雨乞いをする巫祝の姿が、そのまま字形として残っているのです。

 「需」に「さんずい(さんずい)」を加えた文字が「濡(じゅ)」です。雨乞いで、雨が降(ふ)ってきて、「うるおう、ぬれる」という意味の字です。

 群馬(ぐんま)県に嬬恋(つまごい)村という場所があります。日本武尊(やまとたけるのみこと)が、夫人である弟橘姫(おとたちばなひめ)の死を嘆(なげ)き、「吾嬬者耶(あづまはや)」(ああわが妻(つま)よ)と叫(さけ)んだと伝えられている土地です。

 この場合の「需」は雨乞いをする身分の低い巫祝のこと。それに「女」を加えて「嬬(じゅ)」という文字ができました。これは「儒」の巫祝に対して、巫女(みこ)を表す文字です。

 中国では「巫女」の意味の他に側女(そばめ)(本妻(ほんさい)以外で夫婦(ふうふ)関係にある女性(じょせい))の意味がありますが、「万葉集」などの日本の古典では「嬬」は「妻」の意味に使うことが多いそうです。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

 【編注】今回テーマの漢字「儒」と「需」は常用漢字です

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