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文化

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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(番外編3)「微」  道路で巫女を打つ 

2014.7.17 13:28

 「微(び)」と「徴(ちょう)」。似(に)ていますね。漢字を学び始めたころ、紛(まぎ)らわしくて困(こま)りました。でも困って当然、これらはよく似た行為(こうい)を表す字なのです。

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 「微」「徴」の異(こと)なる部分、「兀(こつ)」と「王」に注目してください。まず「微」の「兀」は髪(かみ)を結ばず、切った髪のような人の側面形の姿(すがた)で、巫祝(ふしゅく)(神に仕える人)のことです。その上の「山」は頭部に髪飾(かみかざ)りをつけた姿です。だから「微」の真ん中の字形は髪飾りをつけた巫女(みこ)の側面形です。

 「微」の右「攵(ぼく)」は、元は「攴」です。「攴」の「ト」は木の枝(えだ)、「又(ゆう)」は「手」の形で、「攴」は木の枝などを持ち、誰(だれ)かを打つ形です。左の「彳(ぎょうにんべん)」は十字路の左半分の形で道路のことです。

 つまり「微」は道路で髪飾りをつけた巫女を木の枝などで打つ形の字です。そうやって敵(てき)からの呪(まじな)いを衰微(すいび)させる行為です。なぜ目の前の巫女を打ち、敵の呪いを衰微させるのか。現代人(げんだいじん)には分かりにくい間接(かんせつ)的な行為ですが、この行為を共感呪術(じゅじゅつ)と言います。敵の呪力をそぐので「かすか」などの意味があります。

 「徴」のほうの「王」の字形は王様のことではなくて、「呈(てい)」の下にあるのと同じ、人が真っすぐに立つ「テイ」という字です。上の「山」は、この場合は長髪(ちょうはつ)のこと。

 「王」と「山」で捕(と)らえた敵の長髪の長老のことです。その長老を打って、その呪力を刺激(しげき)して、打つ者の要求することの実現(じつげん)を求める行為です。その要求実現の徴(しるし)があらわれることを「徴」と言います。

 敵の長老を打つ行為は懲罰(ちょうばつ)の意味もあるので、敵を懲(こ)らしめることを「懲」と言います。

 もう一つ。「徽章(きしょう)」の「徽」を紹介(しょうかい)しましょう。これは「微」の省略形(しょうりゃくけい)に「糸」を加えた字です。「微」で打つ巫女に飾りのための「糸」をつけ、巫女であることの「はたじるし」にしたのです。後にすべての「徽章」の意味に使うようになり、「しるし」の意味になりました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

 【編注】今回テーマの漢字「微」は常用漢字です。「徴」も「懲」も常用漢字です。

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