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なるほど漢字物語

文化勲章を受けた漢字学者の白川静さん(故人)の研究を基にして、漢字の体系的な仕組みを楽しく伝える企画です。

(番外編6)「鬱」  香りの強い酒を醸す 

2014.8.7 13:01
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 常用(じょうよう)漢字表が2010年に改定され、「鬱(うつ)」が新しく常用漢字に加わりました。パソコンや携帯(けいたい)電話メールの時代を反映(はんえい)して、読めれば書けなくてもよい文字の代表として「鬱」が選ばれたようです。でも書けないのはしゃくですね。「鬱」の成り立ちを理解し、書けるようになりましょう。

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 「鬱」は「酒」に関係した文字です。まず「鬱」の左下にある「鬯(ちょう)」という字形を覚えてください。「鬯」は香草(こうそう)を酒壺(さけつぼ)に浸(ひた)している形です。「凵(かん)」の部分が容器で、下の「ヒ」がその脚部です。「凵」の中の「米」のような形が香草です。

 その香草で、香(かお)りがついた酒を「鬱鬯(うっちょう)」と言います。お祭りにはその「鬱鬯」の酒を使いました。

 「鬱」は「鬯」「彡(さん)」「冖(わかんむり)」「缶(かん)」「林」でできています。「冖」は容器(ようき)のふた。「彡」は色や香りが盛(さか)んな様子を表す記号です。「缶」は今はカンのことですが、古代では「甕(かめ)」です。木がこんもり茂(しげ)るように「甕」の中に醸(かも)された酒があるので「林」があります。

 つまり「鬱」は甕の酒に香草を加えた鬯をふたして覆(おお)っておくと、時を経(へ)て強い香りがする酒である「鬱鬯」ができることを表した文字です。

 「鬱」は「抑鬱(よくうつ)」など「ふさがれた」意味と、林が「鬱蒼(うっそう)」と盛んに茂る意味など、一見相反する意味があります。でもふたをした甕の様子と、そこで盛んに醸される香り酒を考えれば相反することではないのです。

 「鬱」の文字の成り立ちは理解(りかい)できましたか。でもやっぱり少し複雑(ふくざつ)ですか。別な覚え方をしている人もいるので、参考に紹介(しょうかい)しましょう。

 「リンカーン大統領(だいとうりょう)はアメリカンコーヒーを3杯(ばい)飲む」という方法。「リン」(林)「カーン」(缶)大統領「は」(冖)アメリカン(米)コ(凵)ーヒ(ヒ)ーを3(彡)杯飲むという覚え方です。うまいこと言うものですね。どちらの覚え方でもいいですから、「鬱」の成り立ちは忘(わす)れないでください。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

 【編注】今回テーマの「鬱」は常用漢字です

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