(728)絶食55日目、真っ暗闇の中をえさを与えに行く ホッキョクグマ(上)

2022年09月10日
共同通信共同通信
破れた洗濯かごに頭を突っ込むホウちゃん
破れた洗濯かごに頭を突っ込むホウちゃん

 

 大阪市の天王寺動物園にいるメスのホッキョクグマ、ホウちゃんはとても活発だ。プールにドボーンと飛びこんで、浮かんでいるポリタンクに鼻をつっこんで中のおやつをとろうとしたり、洗濯かごをかぶってみたり。大人気で、ホウちゃんの前はいつも人だかりだ。
活発に動く
活発に動く

 

 生まれたのはおととし11月。どんな苦労があったんですか? 担当の油家謙二(あぶらや・けんじ)さんに聞いた。

「出産前、お母さんにはとにかくたくさん食べてもらいました。ホッキョクグマのお母さんは出産から産室内での育児の間、何も食べない。栄養をいっぱいたくわえておく必要があるんです」

 産室の問題もあった。

「自然界では雪の中に巣穴をほるので光も音もほとんどない。そんな環境は無理でも、これぐらいなら子育てできるかも、ぐらいには思ってもらわないと」。防音シートをはり、格子とびらには板をはって、光が入らないようにした。

 無事、出産したけれど、そのうちに母親の栄養のたくわえが底をつきそうになった。絶食開始から55日目、油家さんがえさを与えに行く。

「子育て中の母親はとても神経質。人が入ることで安全ではないと思うと、子育てをやめるかもしれない。部屋の明かりもつけず真っ暗な中を進み、えさをやりました。うまく食べてくれたんです」

 ほっとした気持ちと、うれしさが伝わってきた。(文・写真、佐々木央)

おもちゃで遊ぶホッキョクグマのホウちゃん
おもちゃで遊ぶホッキョクグマのホウちゃん