(711)水流に向かって泳ぐ魚 ウケクチウグイ

新潟市の水族館、マリンピア日本海には「信濃川」というゾーンがあって、ゆるいスロープをのぼって行くと、下流から上流にさかのぼるように、水槽の生きものが変わっていく。
「中上流域」の水槽で、大きな魚が何匹も並んで、こっちを見ている。担当の田村広野(ひろや)さんによると、ウケクチウグイといい、日本にいるウグイの仲間では最大だ。
新潟県を流れる信濃川水系、阿賀野川水系などからしか見つからず「以前から知られていたんですけれど、新種と確認され学名が付いたのは2000年になってからです」
同じ方向を向いているのはどうして?
「川の上流に向かって泳ぐ魚なんです。この水槽は自然の川のような水流はないんですが、水を循環させているので、その流れはあります。それに向かっているんです」
絶滅が心配されている。「ほかの絶滅危惧種、シナイモツゴやホトケドジョウやタナゴ類は繁殖に成功しているんですが、これはまだです」。ちょっとくやしそう。何がむずかしいんですか?
「生息地と同じように水温を変化させたり、照明を自然の太陽光のリズムに合わせたり、いろいろ試みているんですが、水槽の中は自然と完全に同じにはできません」
でも、こんな大きなウケクチウグイを何年も展示しているのはここだけだ。すごいと思った。(文・写真、佐々木央)=2022年2月配信
