(695)地元で大事にされてきた ジャンボシシガシラ

福島県猪苗代町(いなわしろまち)のアクアマリンいなわしろカワセミ水族館。入ってすぐ右側のエリアに金魚の水槽がならぶ。一番大きな水槽は、泳いでいる金魚も大きい。中でも、頭が大きくてもりあがっている金魚はすごい迫力だ。
説明の絵を見ると、ジャンボシシガシラという種類だ。シシガシラは漢字なら「獅子頭」。たしかに頭に獅子頭をかぶっているみたいだ。頭からおびれの先まで30センチ以上ありそう。
「これでまだ5歳です。大きいものだと40センチを超えます」と館長の安田純(じゅん)さん。熊本県長洲町(ながすまち)でつくられた品種だ。
「ある地方でつくりだされて、その地元で大事にされてきた金魚を地金魚(じきんぎょ)とよびます。どこでも手に入るような金魚もいますが、地金魚はそこでしか手に入らないことが多いんです」

ここには30種近くの金魚がいて、めずらしい地金魚も多い。「それぞれ性質がちがうので、それに合わせないといけない。たとえば、けっこう泳げる魚もいれば、ほとんど泳げない魚もいます。泳げない魚には、なるべく水流がないような環境をつくるんです」
大きな頭にばかり注目してしまうけれど、ひれも大きくて美しい。近よってくるときの顔は、なんだかあいきょうがある。
「表情があるわけじゃないんですけれど、なんとなく表情を感じますよね」(文・佐々木央)=2021年10月配信