(563)岩のすきまに体を固定する モンガラカワハギ

人間ならくちびるに当たる部分が黄色く、体全体は黒っぽい茶色だ。おなかには大きな白い丸がいくつもならんでいる。
きれいだから写真をとろうとしたら、すいすい方向を変えるので、なかなかうまくとれない。
山口県下関(しものせき)市の市立しものせき水族館「海響館」にいるモンガラカワハギ。こんなに目立ったら、食べられちゃうんじゃないですか? 担当の園山貴之(たかゆき)さんに聞いたら、そうではないらしい。
「わたしたちには派手なもように見えても、魚たちからもそう見えるとはかぎらないんです。特に熱帯の海は色とりどりのサンゴがあったりして、まわりにあざやかな色がいっぱいです。そこにとけこみやすい色やもようになっています」
この水槽には「モンガラカワハギ科」の仲間が多く泳いでいる。アカモンガラは体が青い。それなのにどうして「アカ」なんだろう?
「歯が赤いんです」。目をこらすと、たしかに赤い歯だ。
岩のすきまに魚がはさまっている。白っぽい体に青やグレーがまじる。ムラサメモンガラだ。
「はさまっているわけではありません。モンガラカワハギの仲間は背びれと、トゲのようになった腹びれを立てて、こういうすきまに体を固定することができるんです」
思いもよらないことができる生きものがいるんだ。(文・写真、佐々木央)=2019年3月配信