(567)水流で動くえさを食べる チュウサギ

真っ白な鳥が水槽(すいそう)のふちに立っている。風がふくと、羽が風になびく。きれいな鳥だなあ。見とれていると、水槽の水がぐるぐる回り始めた。
底にしずんでいた魚もいっしょに回る。それをさっとくちばしでつかまえて食べた。2匹いたのに、あっという間に食べてしまった。
長野県飯田(いいだ)市立動物園にいるチュウサギ。「夏鳥」として日本に来て、卵を産んでひなを育て、冬はインドやインドネシアにわたる。日本では数がへり、絶滅も心配されている。
この水槽は飼育員の前裕治(まえ・ゆうじ)さんが考えた。でも、この「バードホール」には、アネハヅルやオシドリ、キジバトなどもいる。えさを横取りされたりしないんですか?
「ほかの鳥はこういう水槽のはしに止まれないか、止まれても魚を食べる鳥じゃないんです」
じゃあチュウサギだけのえさなんだ。どうしてこういう水槽を思いついたんですか?
「学生時代にサギの行動観察をしたんです。それでえさが不規則(ふきそく)なタイミング、不規則な動きで水面にうかび上がったら、チュウサギが野生に近い動きで食べられると考えました」
この水槽でチュウサギは変わったのかな。
「活動の量がふえて、肉づきも良くなってきた気がします。求愛のための羽も立派になってきたと思います」(文・写真、佐々木央)