【『小さな恋のメロディ』50年後の会見記(1)】 ダニエルとメロディが来日、幸せをありがとう


映画「小さな恋のメロディ」の大ファンというエッセイスト澤田康彦さんが、50年の時を超えて来日した主演俳優2人を京都市で迎えた。私的かつ世代的な感懐を交え、会見記を寄せてくれた。

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「お元気でいてくれてありがとうございます」
質疑応答のマイクを握った年配の男性が頭を下げた。京都の映画館内は万雷の拍手に包まれた。何でもない言葉がこの日は心に染みた。
「小さな恋のメロディ」の上映後、ダニエル役のマーク・レスター(64)と、メロディを演じたトレーシー・ハイド(63)がそろって現れたのだ。

公開50周年を祝したイベント。招聘元の横浜「シネマノヴェチェント」ほか東京・京都の映画館でリバイバル上映され、ファンとの触れあいの場が設けられた。映画興行史においては稀有な事例だろう。11歳のダニエルとメロディを半世紀後に迎えるとは。熱狂したファン(多くは現在60代)にとっては奇跡としか言いようがない。
別の会場では感極まり号泣する女性をトレーシーが優しく抱き締めるという一幕もあったと聞く(うらやましい)。全て満員御礼。かつての熱気がいまだ冷めやらぬことを示した。
京都市在住の私は「京都みなみ会館」で久々に作品を堪能、質疑応答、その後の面談で彼らに初めて触れる機会を得た。
こんな日が来るなんて。1971年秋に地方の映画館で、ダニエルと同じように一発でメロディに心奪われた。「この世にこんな素敵な女の子がいるのか!」。映画館に通いサントラ盤に聴きほれた中学生が、65歳の今、本人たちに会う。思えばいつも本作について語ってきた。私事を重ね恐縮だが、最近も拙著「いくつもの空の下で」(京都新聞出版センター)で礼賛を繰り広げたばかり。挿画は小池アミイゴ氏。2人を鮮やかな若葉色で描いてくれたのはつい先日だ。

「50年間の幸せをありがとう」。私もそんな言葉をささげたい。実はこれは映画内、デートでメロディが読む墓碑銘の一節である。「50年ってどれくらい?」と彼女が聞くとダニエルは答える。「150学期」。おお私らはみんなであれから150学期生きてきたのだ。
ラストシーンは駆け落ち。トロッコで地平線に消えていった2人は、半世紀後に日本に着いた。ずいぶん長いこと漕いでたね。

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【筆者略歴】さわだ・やすひこ 1957年滋賀県生まれ。上智大卒業後にマガジンハウスに入社し、雑誌「ブルータス」などの編集を担当。「暮しの手帖」編集長も務めた。著書に「ばら色の京都 あま色の東京」「いくつもの空の下で」。
