【5055】日高見 弥助 芳醇辛口純米吟醸(ひたかみ)【宮城県】


【B居酒屋にて 全5回の①】
飲兵衛は年末、なじみの酒屋を挨拶回りする。俗に“檀家回り”ともいう。飲む口実が出来、飲兵衛にとって年末は楽しい時季だ。もちろんB居酒屋に顔を出す。おそらく2022年、わたくしが一番多くの種類の酒を飲んだのは、このB居酒屋であるのが間違いのないところだから。というよりは、断然トップだ(笑)
最初にいただいたのは「日高見 弥助 芳醇辛口純米吟醸」だった。「日高見」は飲む機会が多い酒で、当連載でこれまで、14種類を取り上げている。魚に合う酒、というイメージを持っている。今回のお酒はどうか。いただいてみる。
香りは抑えられている印象。さっぱり、さわやかな口当たりで、キレ良し。辛みは最初のアタックで来るのではなく、やや遅れて中盤から余韻にかけて出てくる。旨みと酸が良く出ており、辛みは適度。これはいい。バランスがとれており、香りも抑えられていることもあって、食中酒に最適。辛口酒を名乗っているが、ドライなだけの味のしない極辛ではないのがいい。そして、飲み進めていくと、じわじわ辛みが出てくる。もしかして「日高見」のヒット作なのではないだろうか。そんなことを感じさせるお酒だ。クラシックタイプのライトボディー。あるいは爽酒。あるいは淡麗辛口酒。
ラベルのスペック表示は「アルコール分16度、原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、精米歩合50%、製造年月2022.10」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。
ところでわたくしは、この酒を飲んだ時点で「弥助」の意味を知らなかった。したがって、テイスティングコメントも、弥助の意味を知らない時点で書いたものだ。
「弥助」の意味をネットで検索していたら、「酒やの鍵本」(和歌山市)が分かりやすく説明していたので、以下に転載する。
「大の鮨好きである(平孝酒造の)平井社長は、ある地方で食べた鮨の味に感銘を受け、およそ三年という構想を経て、鮨に合う究極のお酒、"弥助"を生み出しました。
『弥助』とは、花柳界(かりゅうかい=芸者の世界)での鮨の隠語。『義経千本桜』という、人形浄瑠璃および歌舞伎の演目において、源平合戦で命からがら生き延びた平維盛が鮨屋に逃げ込んだ際に名乗った偽名が『弥助』であったことから鮨の隠語として呼ばれるようになりました」
これを読んで笑ってしまった。源平合戦時代に鮨屋があったのかよ!と。鮨屋は江戸時代発祥のはず。おそらくは、義経三本桜の作者の空想・創作で鮨屋が登場したのだろう。当時は、時代考証なんて概念は無かったのだろう。
酒名「日高見」の由来について「日本の名酒事典」は、「太陽の恵みを受ける『日高見国』が、北上川を中心とする地域に依存しているという郷土の伝説と、地元を大切に考える蔵の姿勢から命名」と説明している。地図を見ると、蔵のある石巻市は、旧北上川の河口に位置している。