【5011】〆張鶴 特別本醸造 雪(しめはりつる)【新潟県】

2023年01月07日
酒蛙酒蛙
新潟県村上市 宮尾酒造
新潟県村上市 宮尾酒造

【B居酒屋にて 全3回の③完】

 E居酒屋で、この「日本酒津々浦々」の取材(テイスティング)をしていたら、3人組が入ってきて、たばこを吸うわ、カラオケを歌うわ、で落ち着いてテイスティングができる状態ではなくなった。残りは後日、E居酒屋に出直してテイスティングすることとし、その夜はB居酒屋に転戦した。

 B居酒屋では「吉田蔵」「磯自慢」と飲み進め、最後にいただいたのは「〆張鶴 特別本醸造 雪」だった。「〆張鶴」は当連載でこれまで、8種類を取り上げているが、「〆張鶴」定番中の定番のこの酒をまだ飲んでいなかったとはびっくりだ。あるいは、この連載が始まる前に何回か飲んだことがあるような気もする。

 この酒は見るからに燗上がりしそうなので、まず冷酒でいただき、次に燗酒でいただく。この逆はいけない。燗酒の次に冷酒を飲むと、味が感じられなくなり水のようにおもえる恐れがあるからだ。

 さて、まずは冷酒で。上立ち香はブドウをおもわせる、すっきりとした香りがほのかに。含み香はアルコール感あり。含むとまず、辛みを感じる。口当たりはすっきり、シャープ。味わいは、甘みは少ないが、旨みがややあり、辛みを強めに感じる。この辛みは、味のしないドライなだけの辛みとは違い、旨みを伴っており、舌を刺すようなしっかりとした辛さ。この“マジ辛”が良い。キレは非常に良い。クラシックタイプのライトボディー酒。あるいは爽酒。あるいは淡麗辛口酒。

 次に仲居さんに燗をつけてもらう。口にしてみたら、推定温度45℃くらい(ぬる燗~上燗)。ちょうど良い温度帯だった。含んでびっくり。おもわず「おおおっ!」と声が出た。甘みが出てきたのだ。甘みが出るとともに、辛みが強まり、マジ辛モードでジンジン来る。旨みもさらに出てきて、味がふくらむ。酸もおもむろに出てきて味がさらにふくらむ。この酒は45℃がベストか(あくまでも個人的好み)。酸と辛みのバランスが絶妙。まったく飲み飽きしない。これはいい!!! 晩酌酒、食中酒に最適だ。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)醸造アルコール、精米歩合55%、製造年月日22.10.07」。

 酒名「〆張鶴」の由来について、コトバンクは以下のように説明している。「酒名は古くからあり、その由来は定かではないが、酒造場を清浄な神域ととらえ『注連縄を張る』という意味があるのではないかといわれている」