【4954】赤武 AKABU 純米吟醸(あかぶ)【岩手県】

2022年11月12日
酒蛙酒蛙
岩手県盛岡市 赤武酒造
岩手県盛岡市 赤武酒造

【S蕎麦屋にて 全5回の➁】

 
 S蕎麦屋は、かけそばが絶品なうえ、蕎麦屋にしては置いている酒の種類が多い。蕎麦好き&酒好きのわたくしとしては、こたえられないシチュエーション。「新しいお酒が入りましたよ。いらっしゃい」と連絡が来たので、すみやかに暖簾をくぐった。
 
 今回、トップバッターに選んだのは「黒龍 純吟」。続いていただいたのは「赤武 AKABU 純米吟醸」だった。赤武酒造のお酒は当連載でこれまで、主銘柄の「浜娘」1種類、「赤武」7種類を取り上げている。「赤武」は、甘旨酸っぱい味わいの、モダンタイプのお酒というイメージが濃厚にある。今回のお酒はどうか。いただいてみる。
 
 上立ち香、含み香とも果実香が、やさしくほのか。一口目。甘旨みを感じる。二口目。今度は酸を感じる。甘みが立ち、酸と相まって、口の中にジューシー感が広がる。そして、次第に甘旨酸っぱい味わいに。中でも甘みがけっこう強く出ている。ミネラル感もある。余韻は甘みと酸。そして、キレが非常に良い。全体的にきれいで上品感のある酒、そして飲み飽きしない酒。モダンタイプ寄りのミディアムボディという酒質に感じた。
 
 蔵のホームページはこの酒を以下のように紹介している。
 
「リンゴのような華やかな果実香から、ほのかにバニラや杏仁を想わせるまろやかな香りが口の中に広がり、全体を調和してくれます。爽やかな甘みをともなった淡い酸味が心地良く、アフターには穏やかな渋みが絶妙に飛び込むことで、短い余韻からアルコールのであることを忘れてしまう様な飲み心地。
 柑橘類をアクセントにしたシーフードのマリネなど爽やかな料理に、華やかさと甘みが加わり、お料理を一層引き立たせてくれます。よく冷やして(0~5℃)ワイングラスなどでお楽しみください」
 
 また、瓶の裏ラベルは、純米吟醸酒について「『純米吟醸酒』は吟醸特有のフルーティーな香りを創りだす酵母と麹の味わいが絶妙なハーモニーを生み出します」と説明している。
 
 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合50%、製造年月2022.7、アルコール分15度」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だが、蔵のホームページでは使用米を「吟ぎんが」と開示している。
 
 使用米の「吟ぎんが」は、岩手県農業研究センター銘柄米開発研究室が、岩手県オリジナルの酒造好適米をつくるため1991年、母「出羽燦々」と父「秋田酒49号」を交配し、育成した品種。2002年に品種登録された。品種名は、全国から寄せられた769通の応募から選ばれた。
 
 今回のお酒を含め、すべての「赤武」商品の裏ラベルに、以下のコンセプトを掲載している。「若き杜氏『古舘龍之介』を中心に志ある社員が魂を込めて醸した日本酒です。目指すものは、妥協せず仕込みひとつひとつを大切に日々進化する酒造りです」
 
 赤武酒造は岩手県上閉伊郡大槌町で酒造業を営んでいたが東日本大震災で被災、それを乗り越え盛岡市で復活を遂げた蔵である。赤武酒造の再起については、2012年1月3日付東京新聞に詳しく書かれている。その要旨は以下の通り。
 
「震災を受けてすべて流された赤武酒造の古舘社長は廃業を決意し、ハローワークにも通ったが、取引先やなじみ客から励ましを受け、再び立ち上がる意欲がわいたのが震災から2カ月以上たってからだった。
 家族で避難していた盛岡市に酒蔵を貸してくれる酒造会社を探し、同市の桜顔酒造が申し出を受け入れてくれた。酵母は岩手県工業技術センターに残っていた『浜娘』のものを使用した。
 出荷目標は被災前の大槌町の人口と同じ15,994本。古舘社長は『水が違うので、まったく同じ酒は造れない。でも、浜娘としてイメージしていた味に近づけることはできた。最高に、という意味の“ガッツラうまい酒”になったと思う』と話している」
 
 この出荷目標15,994本は2012年7月23日に達成した。同日付の蔵のブログに、古舘社長は以下の書き込みをしている。
 
「大槌町は震災前、15,994名、町に住んでいました。震災で約1,600名が犠牲になりました。空たかく旅立った親戚、友人、仲間にも、現在、頑張っている方にも飲んで頂きたい。この思いより『浜娘 純米酒 1800ml』を15,994本お届けしようと決め活動してきました。
 私の力不足で7月になりましたが、本日23日に15,994本目を出荷する事が叶いました。願いは叶う。そう信じて夢中で進んできました。お買い上げ頂いた皆様へ感謝を込めてご報告いたします。ありがとうございました」
 
 そして2013年、盛岡市に「盛岡復活蔵」を建設。翌2014年には新銘柄「赤武」を立ち上げ2018年3月1日、本社を大槌町から盛岡市に移転した。「赤武」は大きく成長、今では全国に広く知られる銘柄となっている。