(738) ゆっくり動くのは生きるための戦略 スンダスローロリス
2022年11月19日


すみからこちらをのぞきこむようにするスンダスローロリス
枝の上をゆっくり歩いたり、逆さまにぶらさがったりしている。大きな目がぴかぴか光ってかわいい。
北海道札幌市の円山動物園にいるスンダスローロリス。夜行性なので、部屋を暗くして、動くすがたを見られるようにしている。
夜行性なのは、おくびょうだからですか? 担当の飯島なつみさんに聞いた。
「そんなことはなくて、たとえばレッサーパンダにやっている竹の葉っぱの残ったのを入れてやると、一目散に来てさわります。何か違ったものがあると、すぐにたしかめるんですよ」
マレー半島やスマトラ島にいる原始的なサルの仲間だ。名前に「スロー」が入っているとおり、動きはゆっくり。
天敵(てんてき)におそわれやすいんじゃないですか?
「大きな類人猿などが天敵ですが、早く動くと、かさかさという音がしたりして見つかりやすいけれど、ゆっくりなら音がしないので気づかれにくいんです」
樹液を食べるめずらしいサルだ。動物園では、アラビアガムという樹液を固めたものをとかしてあたえる。ほかにミルワームという虫やコオロギも食べさせる。
「えさをとるときにも、ゆっくり動けば気づかれにくい。これも戦略なんです」。コオロギをつかまえる時は、ゆっくり近づいていって、最後は、ぱっとすばやく。見どころのひとつだ。(文・写真、佐々木央)=2022年8月配信

えだにつかまるスンダスローロリ