便秘で高い認知症リスク 国立がんセンター調査
2023年09月19日

排便の回数が少なく、便が硬い便秘気味の人ほど、将来、認知症になるリスクが高いことが、国立がん研究センターなどの調査で分かった。排便習慣が将来の認知症の発症に関連することを示した初の研究という。同センターで行っている多目的コホート研究班が国際専門誌に発表した。

研究班は、秋田、長野、茨城、高知、沖縄の特定の保健所管内に住む人を通じて、生活習慣と病気の関連を調べている。今回は、2000~03年に排便習慣についてアンケートに回答した50~79歳の男性約1万9千人と女性約2万3千人を追跡調査。要介護認定の情報から、男性1889人、女性2685人が平均約10年後に認知症と診断されたことが分かった。
排便習慣と発症との関係を分析したところ、毎日1回排便する人に対して、週3、4回の人は男性で1・46倍、女性で1・16倍、認知症リスクが高かった。週3回未満の人は男性で1・79倍、女性で1・29倍とさらに高まった。
便の硬さについては、「普通」と答えた人に対して「硬い」と答えた人は男性で1・30倍、女性で1・15倍、「特に硬い」と答えた人は男性で2・18倍、女性で1・84倍、認知症のリスクが高かった。
研究班によると、便の頻度が少なく硬いと、腸を通過する時間が長くなり、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸という物質が減る。すると、酸化ストレスと炎症が増えて認知症のリスクが高まることが推定されるという。
同センターの澤田典絵コホート研究部長は「中年期から排便の回数や便の硬さを改善しておくことが、認知症の予防に重要だと考えられる」と話している。