【5223】あさ開 純米吟醸 白ラベル(あさびらき)【岩手県】


【S蕎麦屋にて 全4回の➁】
なじみの蕎麦屋の店主から「新しいお酒が入りましたのでいらっしゃい」と一升瓶を並べた写真を添付したメールが届いた。飲んだことがない酒が多い。こりゃ、無くなる前に店に行かなくっちゃ。ということで予約のメールを送り、暖簾をくぐった。このところ、入荷酒のご案内メールの頻度が高まってきた。ということは、お客さんの出足が戻り、酒の回転が速くなった、ということだ。うれしいことだ。
今回、最初にいただいたのは「山形正宗 辛口純米」。続いていただいたのは「あさ開 純米吟醸 白ラベル」だった。「あさ開」は当連載でこれまで、7種類を取り上げている。さて、いただいてみる。
上立ち香はほとんど感じられない。含み香に古酒似ナッツ系的“昭和香”が入る。ふくよかで、厚めの口当たり。とろみも感じる。味わいのファーストアタックは甘み。そして中盤から余韻は辛み。この辛みがけっこう太くて強い。中盤から酸も適度に出てくる。この酒をひとことで言えば、甘みと辛みの酒。あるいはクラシックタイプの、フルボディー酒寄り。あるいは醇酒。例えるなら「古風で恰幅の良い旦那さん」というイメージのお酒。
瓶の裏ラベルはこの酒を「米・酵母・麹菌など原材料すべて岩手にこだわった純米吟醸酒。すっきりと柔らかな口当たりです」と紹介している。わたくしの舌には、すっきりというよりどっしりに感じた。もっとも、直前に飲んだ「山形正宗」の影響で舌が、この酒を厚みのあるように感じたのかもしれない。「あさ開」を最初に飲んでいれば、すっきりとした口当たりに感じたのかもしれない。お酒は、飲む順番により印象が大きく変わってくるから難しい。
瓶の肩ラベルは「ALL Iwate 米・水・麹菌・酵母・南部流」とオールイワテを強調している。
裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米麹(国産米)、精米歩合55%、アルコール分14度」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念。ずいぶんこだわって醸しているようなので、そこまでこだわるのなら、品種名も開示してほしかった。
酒名・蔵名「あさ開」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。
「酒蔵の名『あさ開(あさびらき)』は、万葉集に収められた和歌に因んだもので、船が早朝に漕ぎ出す歌の枕詞です。
南部藩士だった七代目・村井源三が武士を辞め、明治4年(1871年)に現在地で酒づくりをはじめたのがその創業にあたります。侍から商人としての再出発と、明治という新しい時代の幕開けにかけて、『あさ開』の名をつけたものといわれております」
蔵のホームページのトップ最上段に「あさびらき こぎ出て来れば 武庫の浦の汐干の潟に 田鶴が声すも ―万葉集 巻十五)と、その歌を載せている。歌番号は3595だが、作者は不詳とのこと。